再び露呈したサプライチェーンの脆弱性
第12回:感染症時代の経営課題を考える
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2021/03/17
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
リスクマネジメントは、企業が与えられた経営環境のもとでリスクを組織的に管理すること、そしてその上で、企業へのダメージを回避したり、低減したりする手法と言えます。
新型コロナウイルス感染症の流行長期化によって、企業の経営環境にも大きな変化がもたらされています。与えられた経営環境が大きく変化している今、その変化を乗り越えて経営を続けていくことが求められています。今回は、この感染症時代における経営課題について考えます。
前回まで、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、「ニューノーマル(新たな常態)」の観点からBPCの見直しを考えました。
その一方、BCPを見直す過程で「サプライチェーンの途絶に備えて調達先を複数化する」、あるいは「テレワークの導入を踏まえて人事制度を見直す」など、新たな経営課題に取り組む必要性を感じている企業もあります。
今回の新型コロナウイルス感染症の流行による環境変化は、流行が落ち着いた段階で、すべての変化が元に戻るとは考えられません。むしろ、その変化の一部は定着する、あるいは加速すると認識し、中長期的に持続可能な経営の観点から経営課題に取り組むことが求められます。
新型コロナウイルス感染症の流行は、世界的な大流行(パンデミック)となりました。グローバルサプライチェーンが寸断され、入るべき部品が調達できないという状況、つまり我が国のサプライチェーンの脆弱性が再び顕在化しました。
また、このようなことは、海外の調達先に限ったこと、また感染症に限ったことではなく、国内の部品調達先が地震に見舞われた結果、自社での事業継続に支障があったという事例も、これまで多くみられました。
調達先が被災し、部品が供給できなくなり、自社の製造がストップするという事態を回避するために、当該部品の調達先を分散する、つまり複数化することが考えられます。そうすることによって、複数ある調達先の1社が被災した場合でも、その他の調達先から部品を購入することができるという考え方です。
ただ、平常時に調達先を一つに絞っていることには、理由があります。それは、調達先を一本化することで、調達コストを下げるということです。もし、ここで調達先を複数化すれば、1社からの調達量は減ることになり、調達単価が上がる可能性が出てきます。
つまり、平常時の調達コストのメリットと、災害時の代替可能性というメリットは、必ずしも両立しないことになります。
最終的には、調達先を絞り平常時の経済的メリットをとるか、あるいは調達先を複数化して代替可能性を高めるかは、経営者が判断することになります。この判断を的確に行うためには、部品など調達している品目について、調達先はどこか、そしてその量やコストはどうなっているかなどの詳細を見える化することが重要です。
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