時間と場所を柔軟に活用できるのがテレワークの特性だが(写真:写真AC)

前回は「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(2021年3月25日、厚生労働省)」(以下、「ガイドライン」)の中から、すでにある労働時間制度との関係、そして労働時間の管理について説明しました。今回は、テレワークで特有な事象の取り扱いについて考えます。

1.中抜け時間

テレワークは「新しい生活様式」に対応した働き方であると同時に、働く時間や場所を柔軟に活用できる働き方です。そのため従業員が、一定程度業務から離れる時間が生じることが考えられ、これを中抜け時間と呼んでいます。

中抜け時間お扱いはあらかじめ就業規則で(写真:写真AC)

企業の中抜け時間への対応は、把握することでも、あるいは把握せずに始業および終業の時刻のみを把握することでもよい、とされています。また中抜け時間を把握する方法としては、従業員が1日の終了時に報告する方法が示されています。

企業は、中抜け時間の取り扱いをどのようにするかについて、あらかじめ就業規則などに定めておくことが重要です。

2.移動時間

①休憩時間として取り扱う場合

移動時間は従業員に自由利用が保障されているかいないかで扱いが変わる(写真:写真AC)

午前中は自宅でテレワークを行い、午後からオフィスに出勤するなど、勤務時間の一部をテレワークとしているケースがあります。このような就業場所を移動する時間は、従業員が自由に利用することが保障されていることから、休憩時間として取り扱うことが考えられます。

②労働時間として取り扱う場合
テレワークによる勤務を行っていても「業務の関係でオフィスに出社してほしい」と急遽、求められるケースがあります。このように、企業側が従業員に対して就業場所を移動することを求め、その際の移動時間について自由利用が保障されていない場合、ガイドラインでは労働時間に該当するとしています。

3.長時間労働

新型コロナウイルス感染症の感染防止対策としてテレワーク制度を導入した企業も多くありますが、本来は、働く時間や場所を柔軟に活用することで業務を効率化するとともに、時間外労働の削減なども目指していました。

しかし実際に導入してみると、次のような事情から、従業員の長時間労働が懸念される状況もみられます。

・テレワークでは、従業員とその上司が別の場所で業務を行っているため、同じ場所で仕事をする場合と比べ、上司が従業員を管理する程度が相対的に弱くなる

・業務に関する指示や報告が決められた就業時間にかかわらず行われやすくなるため、従業員側からみると仕事と生活の時間の区別があいまいになる など

ガイドラインでは、テレワーク導入後の長時間労働を防ぐ方法として、次のページに示すような手法が提案されています。