2021/03/07
事例から学ぶ

小売業は災害時、自社の従業員や売り場のスタッフのみならず、買い物客の安全を確保することが責務だ。が、マニュアルを定めていても、被災直後の混乱のなかで的確な避難誘導を行うのは難しい。東北地方を代表する老舗百貨店の藤崎(仙台市青葉区、藤﨑三郎助社長)は3.11を機にBCPを策定。災害時の基本方針とワークフローを明確化するとともに以前から行っていた防災訓練を充実、各地の小規模店舗も網羅しながら初動にかかる従業員の練度を高めている。また、早期復旧と地域支援を事業継続方針に掲げ、百貨店が地域に果たす役割を問い直しつつ、取引先や顧客との新しいつながりを模索する。
藤崎
宮城県仙台市
❶ 3.11を機にBCPを策定し防災基盤をより強固に
・ BCPで大規模地震時の対応方針とワークフローをマニュアル化。その後、対象とする脅威と網羅する店舗を拡大、特に初動時の体制と役割・任務を明確化
❷ 防災訓練の充実と徹底で実効性を担保
・ 3.11以前から行ってきた防災訓練や売り場ごとのコミュニケーションを充実。特に「買い物客」の安全確保を意識して従業員の練度を高め、マニュアルの実効性を担保
❸ 事業継続方針の実現に向け取引先や顧客との新たな結び付きを模索
・ 百貨店の事業継続の意味を問い直しながら、取引先との協力関係強化を模索。四季折々の催事や行事が立ち直りをあと押しすることも重視し、地域文化を支える存在を目指す
地震想定のBCPを震災の翌年に策定
東日本大震災の翌年、地震想定のBCPを策定した。その後、蔵王山の噴火や頻発する水害にも備えようと、脅威の対象を拡大。本社・本店と各営業店との連携を中心に、緊急時の指示系統やワークフローを見直した。

創業200年を超える老舗百貨店。仙台にある本社・本店のほかに、ギフトや食品・生活雑貨を取り扱う「営業店」が東北各地に18店舗ある。本店以外は売り場面積100~1000平方メートルと小ぶりだが、水害リスクが等しく高まっている上、津波や噴火の発生時に受ける影響は等しく大きい。
そのため、災害時の初動対応マニュアルを営業店ごとに策定。各店が所在地のハザードマップを取り寄せて避難先を確認するとともに緊急時連絡網を整備、本店と連絡がつかない状況に陥っても店長の判断で早期閉店や帰宅指示、避難誘導などの判断ができるようにした。
マニュアルの実効性を担保するのが訓練だ。10年前の津波で被災した塩釜店と気仙沼店は、毎年1回津波避難訓練を実施。なかでも気仙沼店は指定された避難所に津波が押し寄せ、さらに高台へ逃げた経験がある。そのためエリアのハザードマップを独自に検証し、最も高い場所にある気仙沼高校を避難先に設定。市の防災訓練に合わせ、11月第1土曜日には毎年従業員が実際に避難行動を行っている。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
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