帰宅困難時と被災後の参集時に生じる「3密」
第11回:感染症時代のBCP(2)
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2021/03/03
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
前回は、すでに策定しているBCPについて「ニューノーマル(新たな常態)」の観点から見直すべき点はないか、また見直す点があれば、どのような方向性を持って修正するか説明しました。今回も「ニューノーマル」の観点から、BPCの見直しを考えます。
大規模地震が発生した際、企業は従業員の帰宅を抑制し、安全に帰宅することが確認できるまで、社内に待機させることが求められます。
これは、地震発生後は同時多発的に火災が起こり、倒壊した建物の瓦礫(がれき)などで道路が閉塞するなどの状況にあり、その中を帰宅することには大きな危険がともなうからです。また、公共交通機関が運行停止となる中、多くの帰宅困難者が徒歩で一斉帰宅すると、救命・救助活動、消火活動、そして緊急輸送活動に支障があるからです。
地震後、周辺の状況が落ち着くまでには、数日かかることが想定されますから、その間、従業員は社内にとどまります。新型コロナウイルス感染症の流行が続くことを前提に考えると、帰宅抑制に関する企業の対応も見直しが必要です。
従業員が社内で宿泊する場合、多くの企業では、会議室などの広いスペースを使うことを想定しています。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行を考慮すると、「密集場所」とならないよう、それぞれの従業員に対してより広い空間を提供することが求められます。
また、毛布などの寝具を共有することは感染防止対策の観点から望ましくありませんので、それぞれに配布することを検討します。
ただし、感染症の流行後に在宅勤務などのテレワーク体制を導入したことによって、平常時の出勤者数が減っている場合は、その前提で就寝時のスペース配分を決めるとよいでしょう。
これまで自然災害を対象とした防災備蓄においては、アルコール消毒薬など感染防止対策に必要な品物は、必ずしも重視されているとは言えませんでした。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行下で発生した自然災害の場合は、断水で頻回な手洗いが難しくなりますから、アルコール消毒薬などの備蓄量を増やすことが必要です。
マスクについても、被災時に数が足りないことがわかっても、その段階で調達することは困難ですから、平常時に必要量を再確認して調達することが求められます。
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