自然災害が発生すれば必ず複合災害になる
第10回:感染症時代のBCP(1)
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2021/02/17
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
前回まで、3回にわたりウェブ会議について考えてきました。今回は、すでに策定しているBCP(事業継続計画)について、「ニューノーマル(新たな常態)」の観点から見直すべき点はないか、また見直す点があれば、どのような方向性を持って修正するかを説明します。
新型コロナウイルス感染症の流行が長期化しています。感染リスクが低減するとともに、早期診断から重症化予防までの治療法が確立されることによって、我々が安全・安心と感じられるまでには、もう少し時間がかかりそうです。
新型コロナウイルス感染症の流行が続くことを前提に考えると、今後、地震や水害などの自然災害が発生すると、それは必ず複合災害となります。
ここでは、まずBCPが機能する仕組みを確認した上で、自社のBCPが複合災害にも対応できるものとなっているか考えます。
BCPというと「災害が発生した後、どのようにして自社の事業を復旧し、それを継続していくかが大切」と考えておられる方も多いと思います。しかし、BCPには「重要な事業を中断させない」という観点と、それでも中断してしまった場合でも「可能な限り短い時間で復旧させ、継続する」という2つの側面があります。
①重要な事業を中断させない
重要な事業を中断させないためには、その事業を行うために必要な経営資源を守ることが必須です。具体的には、従業員、建物・設備、そして電気・ガス・水道などのライフラインを守ることが求められます。
②中断した事業を、可能な限り短い時間で復旧させ、継続する
自社の経営資源を守るためにさまざまな準備をしていても、事業が中断してしまった場合は、欠けたり、足りなくなったりした経営資源を補って、事業を速やかに復旧させ、継続することを目指します。
新型コロナウイルス感染症のリスクはすでに顕在化していますから、当然のことながら、企業はさまざまな感染防止対策を講じています。
一方、感染症の流行が続く中でも地震や水害などの自然災害は起こり得るという観点からBCPの見直しが行われているとは、必ずしも言えません。
自社のBCPにおける、事業を中断させない、そして中断しても可能な限り短い時間で復旧・継続させるためのさまざまな対策が、感染症の流行下でも実効性があるか、機能するか、という点を確認しておくことをお勧めします。
感染症時代のリスクマネジメントの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方