防災システムとは生命の仕組みそのもの(写真:写真AC)

第3回第4回第5回の事例的考察で阪神・淡路大震災と東日本大震災、新型コロナ感染症を比較し、免疫防災システムの本質が明確に見えてきた。

想定外の災害に対し、私的防災拠点は大いに治療的効果を発揮する。それは災害を事前に予想して準備されたものではなく、住民の間で日常的に用いられていた手法や機器類であるからである。複雑系としての特質に適っていれば、災害の発生後も臨機応変に進化していくことが可能である。

他方、公的防災拠点は過去の災害の経験に学び、次なる災害に十分に対処できるよう準備されたものである。しかし、過去の災害は限定されたタイプであることから、想定外の規模や質の災害にはほとんど無力であり、場合によっては妨げになることもある。免疫反応が逆に母体を傷つけるとアレルギー症状が生じるのと同じで、要注意である。

ただ、公的防災拠点の過信は禁物であるが、私的防災拠点と相互補完的な働きをすることは論をまたない。繰り返しになるが、多くの場合、前者は(国や自治体の)マクロの、後者は(住民主体の)ミクロの視点から機能することになる。しかし後者が進化、肥大化すると、前者に接近または転化、融合することも多々ある。後天的な免疫システム(公的防災拠点)は初めての感染(想定外の災害)のたびに進化していくことになる。