□指定(地方)公共機関が求められること 
特措法では、「指定(地方)公共機関」の制度が設けられ、あらかじめ、業務計画を策定するとともに、対策に必要となる物資等の備蓄を行うことが求められる。 

指定公共機関として、電気・ガス・水道等のインフラ事業者や医療機関等が指定されている。災対法などと異なり、インフラが被害を受けることが想定されていないため、通常業務をできる限り継続することが求められることとなる。

□海外進出企業が検討すべきこと 
海外進出企業は、海外発生時等における社員の帰国のタイミング等を検討することが必要となる。 

政府の行動計画では「帰国を希望する在外邦人の帰国を支援する」こととなっており、病原性に応じて帰国の推奨方法を分けている。また、事業者に対しては「必要に応じ速やかに帰国させるよう要請する」とされているが、現地在住の職員については、「安全に現地に留まること」を想定することが現実的であると考える。 

民間航空機が運航している場合は、希望者の民間航空機での帰国が国等から支援されるが、現地での事業継続等を勘案すると、職員は現地に留まるという選択肢をとることが現実的な場合が多い。 

また、低い確率ではあるが、発生国において出国禁止の措置を取られることや、WHOが発生国への運航自粛などの強硬な手段を講じる可能性がある。この場合は、特措法に基づき、発生国への運航自粛が勧告されることもありうる。 

こうした強硬な手段の確立は非常に低いと考えられるが、担当者は職員が安全に現地に留まることを想定した計画を講じることが必要であると考える。安全に留まるためには、日本の保険会社が提携しているレベルの現地の医療機関と情報交換し、発生時の受入れ方針等を確認することが考えられる。新型インフルエンザの診療は、感染症指定医療機関のみでは対応できないため、各国でも日本と同様に、一般の医療機関でも診療を行う場合が多い。 

なお、帯同家族については、海外発生期の初期の段階であれば帰国促進することも考える必要がある。

□一般の事業者が求められること
一方、一般の事業者については、基本的な感染対策等が求められる。原始的ではあるが、国内発生早期以降、症状のある従業員の出勤停止をすることが、職場で感染を拡大しないために重要だと考えられる。 

事業者の事業継続計画等については、次に記載する。

□予防接種(登録業務)について 
国は、新型インフルエンザが発生した場合、半年間で全国民分のワクチンを準備できる体制を作ることを目指し、2011年8月「ワクチン開発・生産体制整備事業」を立ち上げた。当初、2013年度中の生産体制の強化に向けて、同事業に採択された4社に約1000億円の助成金を配分。しかし、2012年11月に1社(阪大微研)が事業を撤退しており、現時点では約1億人分のワクチンの製造体制が整備されつつある。 

また、特措法では、国民生活・経済を維持するために「特定接種」という制度が設けられた。この制度は、医療機関を含む指定公共機関等の一部の国民生活及び国民経済に不可欠な事業者を事前に登録し、発生時にワクチンを住民に先んじて国費で接種するものである。登録事業者となる企業においては、自社内部で、優先事業の選定等を行いつつ、特定接種の対象者の検討を行うことが求められることとなる。 

また、全国民への予防接種を実施する仕組みも構築された。

今後について 
新型インフルエンザや新感染症はいつ発生するかわからない、という危機感から、国において、スピード感を持って特措法の成立・施行が行われた。今後、地方自治体や各企業においても、行動計画事業計画の策定及び・訓練等を早急に準備・実施することが求められる。


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