2020/07/21
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
進む地元サプライヤー活用
このように、特に国境を越える物流において混乱が大きかった影響からか、調達のあり方を見直す企業が増えているようである。回答者の57.2%が、地理的な観点からサプライヤーを多角化するよう計画していると答えている。より具体的には、図2に示されているように、地元のサプライヤーから調達することが検討されている。

回答者の20.8%が相当数(considerable number)のサプライヤーを、35.8%がいくらか(some)のサプライヤーを、地元のサプライヤーに切り替えると回答している。
なお、ここでは「more locally」などと表現されている部分の「local」を便宜上「地元」と訳しているが、これが具体的にどの程度の範囲なのか(例えば自国内という意味なのか、同じ県や市町村の中なのか、など)は特に明記されておらず、回答者によってまちまちであろうと思われる。したがって、物流面のリスクを減らすために、より近くのサプライヤーを選ぶ傾向がある、という具合に解釈すべきであろう。さらに別の設問(図は省略)では、回答者の13.1%が中国からの、29.9%が極東(Far East)からの調達を減らす予定であると答えている。
過去の災害においても、サプライチェーンの途絶や混乱が発生したことを踏まえて調達先を変更したり、原材料や部品の在庫量を見直したりといった、方針や戦略、計画の見直しが行われてきたが、中には状況が落ち着いてきたところで、コストや効率の観点から元の形態に戻されたものもあったように思う。そういった意味では、新型コロナウイルスのパンデミックによる、このような変化も、収束後(これがいつになるかは分からないが)は元に戻るのではないか?という考え方もあり得る。
しかしながら、このような変化が一過性で済まない可能性も指摘されている。今回の調査の中で行われたインタビューによると、地元のサプライヤーから調達することによって、サプライチェーンがよりシンプルになり、かつ輸送経路が短くなることで二酸化炭素排出量削減目標を達成する上でも有利になるというメリットもあることから、今後も継続的に地元のサプライヤーからの調達を志向する企業は少なくないようである。このあたりは今後どうなるのか、非常に気になるところである。
- keyword
- サプライチェーン
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方