進む地元サプライヤー活用

このように、特に国境を越える物流において混乱が大きかった影響からか、調達のあり方を見直す企業が増えているようである。回答者の57.2%が、地理的な観点からサプライヤーを多角化するよう計画していると答えている。より具体的には、図2に示されているように、地元のサプライヤーから調達することが検討されている。

写真を拡大 図2. パンデミック後にサプライヤーを地元に切り替えるかどうか(出典:BCI / Covid-19: The Future of Supply Chain)

回答者の20.8%が相当数(considerable number)のサプライヤーを、35.8%がいくらか(some)のサプライヤーを、地元のサプライヤーに切り替えると回答している。

なお、ここでは「more locally」などと表現されている部分の「local」を便宜上「地元」と訳しているが、これが具体的にどの程度の範囲なのか(例えば自国内という意味なのか、同じ県や市町村の中なのか、など)は特に明記されておらず、回答者によってまちまちであろうと思われる。したがって、物流面のリスクを減らすために、より近くのサプライヤーを選ぶ傾向がある、という具合に解釈すべきであろう。さらに別の設問(図は省略)では、回答者の13.1%が中国からの、29.9%が極東(Far East)からの調達を減らす予定であると答えている。

過去の災害においても、サプライチェーンの途絶や混乱が発生したことを踏まえて調達先を変更したり、原材料や部品の在庫量を見直したりといった、方針や戦略、計画の見直しが行われてきたが、中には状況が落ち着いてきたところで、コストや効率の観点から元の形態に戻されたものもあったように思う。そういった意味では、新型コロナウイルスのパンデミックによる、このような変化も、収束後(これがいつになるかは分からないが)は元に戻るのではないか?という考え方もあり得る。

しかしながら、このような変化が一過性で済まない可能性も指摘されている。今回の調査の中で行われたインタビューによると、地元のサプライヤーから調達することによって、サプライチェーンがよりシンプルになり、かつ輸送経路が短くなることで二酸化炭素排出量削減目標を達成する上でも有利になるというメリットもあることから、今後も継続的に地元のサプライヤーからの調達を志向する企業は少なくないようである。このあたりは今後どうなるのか、非常に気になるところである。