自ら選択肢や可能性を狭めない(写真:写真AC)

■問題なのは「逃げ場」を失うとき

「現状や未来は自分の手で変えられる」と考える人は、いわゆる「自己効力感」を持っている人です。自己効力感を身につけるにはいくつかの方法が考えられますが、よく引き合いに出されるのは次の2つです。

一つは「自ら選択肢や可能性を狭めない」こと、もう一つは「自分または他人を観察して"やればできる感"をつかむ」こと。まずは前者について考えてみましょう。

周りをよく見て冷静でいること(写真:写真AC)

パニック映画などで人々が逃げ場を失い「もうだめだ!」と叫んだそのとき、沈着冷静な主人公が一言、「いや、諦めるのはまだ早い。助かる可能性はある」と言い放つ。見ている私たちもほっと胸をなでおろし、カッコいいなあ…と思ったりします。

こうした前向きな姿勢というのは、映画の主人公だけの特権ではありません。いま私たちはコロナウイルス・パンデミックの最中にあり「この先どうなるのだろう」「もう元の生活に戻れないのでは」といった出口の見えない不安を抱えています。

しかし考えて見れば、人類は過去にいくつもの戦争や大規模自然災害、大恐慌、そして伝染病など、現代人の私たちには想像もつかないような過酷な時代を生き延び、その都度力強く立ち直ってきました。確かに今のコロナ禍は私たちの生活や経済に計り知れないダメージを与えていますが、けっして人間の力で乗り越えられない相手ではありません。

出口の見えない不安や逆境に苦しむということは「逃げ場」を失うということです。そこから抜け出すためには、何らかの選択の道をつくらなければならなりません。

しかし、目の前にはその選択肢がなく、お手上げの状態だと感じる。こんなとき"選択肢を持つ"ために背中を押してくれるのが「自己効力感」です。