複数受電、ガス・重油の発電も 
停電対策には3重の策が講じられている。東京電力の2つの変電所から特別高圧受電を行っており、メインの変電所から受電ができなくなった場合、サブの変電所から受電する。長時間停電になった場合は自家発電に切り替える。東日本大震災と阪神淡路大震災で信頼性が実証された中圧ガスを東京ガスから供給してもらうほか、ビル内に貯蔵する重油を使うこともできる。中圧ガスの導管は、一般家庭に送られる低圧ガスに比べて伸縮性に優れた素材でできており地震に強いのが特長だ。 

停電対策がある程度行き届いた一般的な高性能ビルでは、オフィス専用部の照明と共用部の照明を確保するので精一杯だが、同ビルでは、空調、電源、OA照明トイレのいずれもがフルに使用できる。ビル内に貯蔵している重油だけであったとしても72時間の電源供給が可能という。浸水対策重要設備は上階に 日本橋はT.P.(東京湾平均海面)+約3.5m。東京湾内の最高津波高は、P.T.+1.4mと想定されているが、同ビルでは浸水対策計画水位を「T.P.+5.0m」に設定。これより低い部分には、建物内への水の侵入を防ぐよう高さ1.5mの止水板を設けたり、特殊仕様のシャッターを設置する。 

一般的なビルでは、機械室が1階や地下階にあるケースが多いが、機械室の大半を7階と屋上の上部に配置。非常用発電機を屋上に、受変電設備と通信設備を7階に置き、地下は、ポンプ施設など最低限に留めて密閉する。

トイレは2週間以上使用可能 
上下水道が断水されても、オフィス内の全トイレは2週間程度利用できる。一般的なビルでは、停電による受水槽からの水供給や断水によって水洗トイレの使用ができなくなり、簡易トイレで急場を凌ぐのが普通だが、1300人の館内人員が想定され約る同ビルでは、被災時に発生した汚物自体の処理を問題視した。 電力供給の強靭さと本ビル特有の排水処理循環システムにより長期間のトイレ使用が可能になる。本ビルでは、屋上の雨水と汚水処理槽からリサイクル処理する水と、雑用水槽に溜まっていた水の3種類を有効活用することで水洗トイレの利用を可能にする。防災グッズの備蓄スペースも 一般的な賃貸ビルなら、入居者が、防災対策の非常用資材や食料、飲料水、医薬品等をテナントルーム内に保管しなければならないが、同ビルでは、入居者向けの防災備蓄スペースをトランクルームに確保している。これにより、入居者は、居たくスペースを有効に利用できるほか、東京都が今年4月に施行した帰宅困難者対策の防災備蓄対策も万全となる。完成は来年8月予定。