多重防御、防潮堤、高盛土の道路・鉄道 
防潮堤は、堤高6.2mだったものを7.2mにかさ上げする。防潮堤の仕様は、数十年から百数十年の頻度に発生する津波に対応する。東日本大震災の津波(今次津波と呼ぶ)だと越水してしまうが、多重防御により減衰させるイメージ。既存の防潮堤は大津波によって山側の法尻部(地盤との接合部)などが洗掘されるなどして壊れたが、仮堤防の応急対策が完了。2015年度末までに改良復旧する。 

多重防御の一翼を担う高盛土構造の道路は、県道相馬亘理線を二線堤とする。県道は、移設が決まったJR常磐線の鉄道敷跡などを利用し、海抜4~5mの高さのものを約11㎞築造する。 

JR常磐線の山元町区間は現在不通となり、代行バスが運行している。沿岸部付近に位置し、山下駅舎、坂元駅舎とも壊滅、線路も消失したため、町とJRが覚書を交わし移設される。用地買収が順調に進めば2014年春に着工、2017年春の開通を目指している。

駅周辺には商業や拠点施設も集積 


集団移転は新山下駅、新坂元駅と国立宮城病院周辺の3エリア。開発面積は、新山下駅周辺約37.1h、新坂元駅周辺約17.7ha、宮城病院周辺が約8.4ha。住宅関係の整備予定戸数は、宅地分譲約380戸、災害公営住宅600戸(2012年度現在)。各新駅周辺には駅前広場や駐車場を整備し、仙台通勤圏としての利便性の強化を図るとともに、商店の誘致や行政サービス機能(支所など)も集積させ、快適で便利な市街地形成を図る。駅周辺にはこのほか、壊滅した小中学校や交流センター(災害時には避難施設、防災備蓄も)などの公共施設も配置する。 

新山下駅周辺については、災害復興住宅が今年4月に県内最速で18戸が完成。現在50戸が完成し入居も始まっている。住宅は戸建てと2戸1棟タイプのほか、中層住宅も検討している。災害復興住宅の建設は、設計施工の一括発注により、建設のスピードを速める工夫も凝らしている。3m浸水地域は新築不可 集団移転を下支えするのは、町条例で規制する建築制限。山元町に限らず、高さ2m以上の津波に襲われると、一般的な2階建て住宅は全壊するという。逆に2m未満だと半壊や一部損壊で済む。 

この目安を基に建築規制が決められている。 山元町では、主に今次津波の浸水深をもとに3種類の災害危険区域を設定している。浸水深概ね3m超を第1種、浸水深概ね2~3mを第2種、浸水深1~概ね2mを第3種に設定。これを踏まえ、住宅については、第1種区域は住宅新築と増改築を禁止、第2種区域は1.5m以上、第3種は0.5m以上のかさ上げを条件に住宅の建築が可能となる。なお、店舗や農機具倉庫、事務所などの非居住用の建物には建築制限が無い。

復興計画策定の体制と復興予算 
町の復興計画は、内外のさまざまな意見を吸い上げてとりまとめた。 

庁内では、町長をトップとし、課長クラスで構成する災害復興本部(計画策定の中心、総合調整)と、各課の班長クラスからなる震災復興検討委員会(計画原案を検討・作成)により復興計画を検討。 

これらを踏まえ、専門家や学識経験者からなる震災復興有識者会議や、住民代表からなる震災復興会議から意見を聞いたほか、パブリックコメントや住民説明会も行った上で、2011年12月に議会承認を受けた。 

復興計画の計画期間は、2011年度から2018年度の8カ年。2013年度までの3カ年は、低下した町機能を回復させる「復旧期」、2013~2016年度を、町本来の姿を取り戻すための「再生期」、2016~2018年度を、活力あるまちづくりに戦略的に取り組む「発展期」として推進する。復興計画は、アクションプログラムの復興整備計画として推進される。 

復興費は、2010年度一般会計予算が約55億円の同町だが、2012年度一般会計最終予算額は約864億円で、2013年度当初予算は約560億円。同年度の最大の歳出は、がれき撤去の約190億円、公営住宅や宅地供給などのハード事業がこれに次ぐ。復興事業の主な財源は復興交付金だが、復興庁との協議により、これまでのところ、概ね要望通りの事業費が確保できているという。 山元町には現在、176人の地元職員に対し、全国から90人以上の派遣職員が応援にきている。県庁から出向している震災復興計画課の本郷和徳課長は、「ピンチをチャンスに変えられるようお手伝いができればと」と抱負を述べた。