2017/03/27
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~
以下、9つのフォーマットを紹介する:
・ 人的資源管理表
・ 物的資源管理表
・ インシデント報告書
・ 人員対応状況表
・ 配属状況表
・ トリアージエリア記録
・ 通信計画表
・ メッセージフォーム



■まとめ
本シリーズで解説しているICSはあくまでも市民レベルまたは従業員レベルでのものである。しかし、この基本を押さえていなければ大規模・広域災害に発展していった時にどうなるのか想像していただきたい。徐々に拡大していく組織体制、多くの関係者が次々と関わる中で問題が複雑化していき、それら全てを調整しなければならない。これらを短時間で素早い意思決定の連続を行い、被害の拡大を最小限に抑えるためにはどうすればよいのか。最終的には統一化されたルールがなければ各関係機関が連携を取るのが困難になっていくのは明らかである。
ICSは1970年代にカリフォルニアで多発した森林火災を教訓として育ってきた仕組みであるが、次のような問題が起きるのは大規模広域災害に共通する課題である。
・ 関係機関がそれぞれ異なった組織構造になっており、組織的な対応が困難。
・ 信頼のおける情報が流れてこない。
・ 各組織で使用する用語がバラバラであるため、適切なコミュニケーションが成立しない。
・ 通信装置や通信手順が統一化されていない。
・ 関係機関の間で共通の計画を策定するシステムがない。
・ 指揮命令系統が不明確(どこで誰が意思決定しているのかよく分からない)。
・ 活動目標が不明確。
・状況認識の統一が困難である。
このような諸問題を解決する一つの手法がICSであるがICSという呼称に惑わされてはならない。言い換えればICSとは一つのチームとして戦うための野球のルールであり、サッカーのルールであり、または将棋のルールなのである。それぞれ身にまとうユニフォーム(背広組、制服組に関わらず)は違ってもICSの概念を少しでも多くのステークホルダーが取り入れ、日本版ICSを確立し、オールジャパンのチームとして戦える体制を一日も早く実現することを願うばかりである。
次号ではICSの概念を基に、火災防護に関する実践的な解説をする。
参考文献:
•COMMUNITY EMERGENCY RESPONSE TEAM. Basic Training Instructor Guide
.FEMA.DHS
•消防業務エッセンシャルズ第6改訂版日本語版
•晃洋書房「3.11以後の日本の危機管理を問う」(神奈川大学法学研究所業書)務台俊介著・小池貞利著・熊丸由布治著・レオ・ボスナー著
(了)
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/03/05
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
-
-
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方