2016/05/27
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
災害時にも使える「ナチュラルクリーニング」
じゃあ、重曹をそのまま髪の毛にふりかけたらどうなるの?
人は汗をかきますよね。冬でも。寝ている時でも。そうすると重曹は溶け、アルカリ性になります。アルカリが髪につくと、たんぱく質が溶けます。そう、汚れだけじゃなく、皮膚も溶けるんです!
重曹が手についたらぬるっとして、軽く皮膚が溶けて、さらにアルカリが多いと手が荒れるほど溶けます。そんな重曹を、水で流しきれない災害時に、髪に使うって、ありえない!重曹をふりかけるという発想がまず間違っている。髪にかけると、アルカリによる肌荒れの原因になるので、全くおすすめできません。二重の意味で間違っている情報です。
重曹は食品にも使えるからいかにもナチュラルにみえます。だけど、そんなイメージだけの発想だと、こんな情報が流れてしまうのだと思うのです。
そもそも「自然素材=安全」ということはありません。野外で出会う自然の花は猛毒のものもたくさんあります。「合成だからダメ」「自然だから、なんでもいい」という発想なのではなく、私は「化学は、普段から生活の中に取り込まれている。化学の知識は、普段も災害時も生かすことができる」と考えています。
災害時のトイレはみかんの皮でお掃除できます!
例えばナチュラルクリーニングでは、アルカリの汚れである水あかやトイレのアンモニア汚れには、「クエン酸」を使います。今のトイレは、尿の飛び散りが少なくなる工夫が凝らされているので、昔の公衆トイレであったような強いアンモニア臭ってほとんどしないですよね。だから「普段のトイレ掃除に酸は必要なくなってきている」と本橋さんは話します。
でも災害時、関係者の努力でトイレは少しずつよくなってはきているものの、まだまだ尿などが飛び散りやすい和式トイレなどが仮設トイレとして設置されてしまうことも多いですよね。尿が飛び散ってアンモニアになってしまうと、普段のトイレ掃除用の中性洗剤では対応できなくなってしまいます。
そんな時、化学にもとづいたナチュラルクリーニングの知恵があると「酸がどこかにあれば衛生状態を保てる!」という発想に至ることができます。
クエン酸といえば、梅干しやオレンジ、レモンにも入っています。それにクエン酸だけが食物に含まれる酸ではありません。臭うけど、お酢も酸です。「洗剤がない、でも避難所トイレがアンモニア臭い。でも、みかんの産地だからみかんの皮がいっぱいある」なんて時は、みかんの皮で掃除ってこともできるのです。
(編集部注:みかんの皮には、クエン酸やビタミン類、精油成分(リモネン)などさまざまな成分が含まれています)
私がアウトドア流防災講座でお伝えしているのは、小手先の防災マニュアルではなく「その奥にある仕組みを知っている」こと。
ランタンを作りたければ、光を広げればいい。光の性質は直進と屈折と反射。LEDは直進しやすいので、水の入ったペットボトルの裏から照らすと屈折により広がるという話などです。
そうすると「生活にも役立ち、普段から使え、災害時にも応用できる」のです。アウトドア流防災も化学をちゃんと使ったナチュラルクリーニングも全く一緒ですよね!
「トイレはトイレ洗剤」「お風呂はお風呂洗剤」という思考停止の覚え方ではなく、小学校6年生でも習う酸とアルカリの性質を見極め、利用するナチュラルクリーニング。だから、災害時に応用がきくと思っています。
「とはいえ、化学なんて」という方にも朗報です。本橋さんも力説されていますが、「ナチュラルクニーニングは楽」なんです。
私はいくら自然に優しくても、毎日、気合と根性だけでは「ただでさえ子どもに振り回されていて掃除どころではないのに、やってられない!」と痛感しています。でも、 手抜きしてもきれいになって、しかも環境に優しければどれだけ楽か。この続きは是非、本橋さんの講座でお聞きいただければ。全国各地で講演されていますし、本もコンビニや書店で大人気発売中です♪
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方