ロシアのプーチン大統領は18日、トランプ米大統領との電話会談で、ウクライナとの30日間の停戦受諾を拒み、エネルギーインフラを攻撃目標から外すことに同意するだけにとどめた。逆にゼレンスキー政権への軍事支援停止を米側に突き付けており、交渉に前向きな姿勢を装いつつ、ウクライナの「非武装化」「中立化」など侵攻の所期の目的達成へと歩を進めた形だ。
 「ロシアは停戦案を拒否した」。ウクライナ大統領府関係者は電話会談後、自国メディアに対し、プーチン政権が侵攻継続を望んでいる証拠だと批判した。
 ゼレンスキー政権は冬季の停電につながる発電施設への空爆に悩まされてきた。一方で、ロシアの収入源をたたき、ロシア国民の厭戦(えんせん)ムードを高めようと石油施設を狙ったドローン攻撃を実施。米紙ワシントン・ポストは昨年8月、ロシアとウクライナが互いにエネルギーインフラを攻撃しないよう「秘密交渉」を模索中だと伝えていた。
 だが、ウクライナが今月11日の米国との協議で譲歩の末に同意した「前線全体」(ゼレンスキー大統領)の一時停戦案と比べると、今回の合意は後退の感が否めない。米側が仮にロシアの要求をのんで軍事支援と情報共有を停止すれば、交渉のてんびんは「ウクライナ不利」に大きく傾く。
 米ロ首脳はエネルギーインフラ以外の停戦や和平を巡り、中東地域での交渉開始で一致した。しかし、プーチン政権は今後もトランプ氏の対ロシア融和路線に乗じ、自国に有利な条件を次々と提示するとみられる。停戦への「本気度」を疑問視し、ロシアによる「遅延戦術」(スターマー英首相)と指摘する声もある。
 「世界はきょうはるかに安全な場所になった」。ロシアの対米窓口であるドミトリエフ大統領特別代表(外国との投資・経済協力担当)はX(旧ツイッター)で電話会談を称賛した。通貨ルーブル相場は対ドルで急伸。経済も米ロ関係改善と交渉の行方を好感している。 
〔写真説明〕ロシアのプーチン大統領=18日、モスクワ(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)