2024/08/18
防災・危機管理ニュース
献血で集めた血液のうち、有効期限が切れ、廃棄する予定のものを使って製造された「人工赤血球」の臨床試験(治験)が奈良県立医科大(同県橿原市)で2025年春から始まる。災害時や離島などの遠隔地での活用に注目が集まっており、同大の研究チームは、30年ごろの実用化を目指す。実用化されれば世界初という。
研究チームによると、人工赤血球は、献血で採取した血液から酸素を運ぶヘモグロビンを抽出し、人工の脂質の膜で覆って製造される。使用するまで酸化しないように作られるため、一般的な血の赤色と異なり、「紫がかった色」をしていることが特徴だ。
この製造方法により、献血などで集めた赤血球が冷蔵で通常約1カ月程度しか保存できなかったのに対し、人工赤血球は常温で約2年間、冷蔵では約5年間保存できる。
血液型を決める膜を除去しているため、血液型が存在しない点も利点の一つ。研究チームの酒井宏水教授(医工学・生体高分子化学)は「事故などで急きょ輸血が必要な場合、患者の血液型を調べる必要があるため輸血までに多少時間がかかる。人工赤血球だと血液型を気にする必要がなくなるため、迅速な処置が可能となる」と話す。
今回の治験では、健康な成人16人に、最大で各400ミリリットルの人工赤血球を投与する予定。速度や量などを4段階に分けて投与することで、安全性などを確かめるという。実用化する場合は、医療現場で需要が高い800ミリリットルを使用する方針だ。
酒井教授は「少子高齢化の影響などで献血が減っている現状に役立つ可能性もある」と指摘。「今回の治験でしっかりと調査し、実用化に向けて一歩ずつ進めていきたい」と述べた。
〔写真説明〕献血で集めた血液から製造された人工赤血球=1日、奈良県橿原市の奈良県立医科大
〔写真説明〕人工赤血球について説明する奈良県立医科大の酒井宏水教授=1日、奈良県橿原市
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方