2024/03/04
防災・危機管理ニュース
元日に発生した能登半島地震は、石川県だけでなく隣の富山県にも大きな被害をもたらした。氷見市栄町の新道町内会がある地区では地盤の液状化が発生。家に住めなくなり、被害世帯の8割弱が転出を希望している。町内会の会長を務める鎌和紀さん(72)も転居を余儀なくされ、「寂しいという言葉しかない」と肩を落とす。
沿岸部にある同地区では、海岸沿いを走る県道付近を中心に液状化が起きた。建物の倒壊は少なかったものの、至る所で地割れが起き、応急危険度判定で「立ち入り危険」を示す赤紙が多くの家に貼られた。地震発生から約2カ月がたっても人通りはまばらだ。
被害のあった家の住人を対象に町内会が実施したアンケートによると、39世帯のうち30世帯が転出する意向を表明。6年にわたり町内会長を務める鎌さんもその一人だ。
鎌さんの家は、地震の影響で地面が隆起し、倒壊の恐れがあると認定された。長年暮らした自宅への愛着はあったが、「次に地震があった際はもっと大きな被害を受けるのではないか」と思い、転居を決意した。鎌さんによると、地盤改良にかかる費用や時間を理由に転出を決める人が多いという。
新年会やバーベキュー大会などのイベントが頻繁に行われ、「つながりが深い町だった」と振り返る鎌さん。3月中に氷見市内の別の地区に転居するが、新道町内会の「取りまとめ役」は続けるという。「残る決断をした人には高齢者も多い。自分にできる支援は行いたい」。離れても、町の行く末を見守るつもりだ。
〔写真説明〕液状化とみられる影響で傾いた門柱と隆起した地面=2月24日、富山県氷見市
〔写真説明〕取材に応じる新道町内会長の鎌和紀さん=2月24日、富山県氷見市
〔写真説明〕液状化とみられる影響で隆起した地面と、応急危険度判定で「危険」と判断された家屋=2月24日、富山県氷見市
(ニュース提供元:時事通信社)



防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方