(出典:Shutterstock)

今回は若干古い情報で恐縮だが、ITインフラの効率性や信頼性に特化したコンサルティングファームであるUptime Instituteが毎年発表している、データセンターの運用管理に関する調査報告書「Data Center Industry Survey」の2023年版を紹介させていただく。

以前に本連載で、同社の報告書「How resiliency drives cloud carbon emissions」を紹介させていただいた際(注1)に、同社が10年以上にわたって「Data Center Industry Survey」を発表しているのを知り、いつか本連載で紹介しようと思っていた。2023年9月にその2023年版が発表されたのだがタイミングを逃してしまった。

2023年版は要約版(Executive Summary)のみが公開されており、下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。

https://uptimeinstitute.com/resources/asset/executive-summary-uptime-institute-global-data-center-survey-2023
(PDF 10ページ/約 0.6 MB)


なお報告書の完全版は同社の会員限定となっている。ちなみに2022年版までは会員以外にも完全版が配布されており、2022年版は33ページあった。要約版にも完全版の目次が掲載されており、これによると2023年版も同じくらいのボリュームのようである。完全版の目次には次のような項目が含まれており、2022年版の大部分が踏襲されつつ、新しいセクションが若干追加されている。

- Industry benchmarks
- Sustainability and metrics
- Resiliency and outages
- Management and regulation
- Cloud and provisioning
- Staffing shortfalls
- Innovation and impact


図1は「Sustainability and metrics」のセクションに掲載されているもので、ITやデータセンターの運営において、企業のサステイナビリティに関する報告のために、どのような測定値を使っているかを尋ねた結果である。最も多いのは電力消費量(IT or data center power consumption)、次いで電力使用効率(PUE : power usage effectiveness)、水の使用量(Water usage)、これとほぼ同率でサーバー稼働率(Server utilization)となっている。

画像を拡大 図1.  サステイナビリティに関する報告のために使用している測定値 (出典: Uptime Institute / 2023 Data Center Industry Survey: Executive Summary)


本報告書では、このような結果となっている最大の理由は、下位となっているデータ(再生可能エネルギーの利用量や炭素排出量など)よりも測定が容易だからだとされている。また、上位4つ(図1で青色および水色の部分)は、これらを減らすことがコスト削減にもつながるため、コスト管理のために把握したいというインセンティブもあると指摘されている。

これらに対して図1の緑色の部分は、数値化に手間がかかる。特に炭素排出量の「Scope 3」は自社における燃料の燃焼やエネルギー消費ではなく、サプライチェーンにおける炭素排出量なので、算出のためにさまざまなデータを集める必要があるため、かなり面倒である。しかしながら、そのような手間をかけてでも数値化しているということは、そのようなニーズもしくは要件があるということであろう。

データセンターの運営に関してこれらのようなデータを使う目的としては、自社におけるサステイナビリティへの取り組み状況を報告する場合と、そのような報告をしたいユーザー企業からデータセンターに対して、データを要求される場合とが考えられる。おそらく欧州においては、後者のような要求が多いのではないかと思われ、サステイナビリティに関するデータの開示に消極的なデータセンターからは、サステイナビリティへの取り組みに熱心な企業や公的機関が離れて行ってしまう、という状況があるのかもしれない。