2018/08/01
防災・危機管理ニュース

有限責任監査法人トーマツは7月30日、「グローバルビジネスリスク記者勉強会」を開催。ディレクターの茂木寿氏が、日本企業が対応すべき海外リスクについて解説した。今回は、米国によるイランへの経済制裁再開が7日にも見込まれており、日系企業に与える影響などについて取り上げた。
イランでは2002年に国内でウラン濃縮施設が見つかって以来、国連・米国・欧州連合(EU)など国際社会からイランへの経済制裁が加えられてきた。2015年7月に米・英・仏・独・中・ロ、EUとイランが「包括的共同行動計画」で合意した「イラン核合意」により、イランは核開発の大幅削減と国際原子力機関(IAEA)の定期視察を受け入れる代わりに、経済制裁の解除・凍結が実現した。ところが今年5月、米国のドナルド・トランプ大統領は一転、核合意で示された計画の有効性を批判。イラン核合意から離脱しイランへの経済制裁を再開すると発表した。
アメリカは世界各国の企業に対して、イランからの原油輸入禁止や、イランとの貿易取引をおこなう際の米ドル建て決済禁止を求めており、これに従わない企業に対して罰金や米国市場へのアクセス制限させるなど制裁を科すとしており、強制力は強い。すでに欧州の企業だけでなく、日本の大手企業や銀行でもイランとの取引中止を発表する企業ができていているという。
日本は中東諸国の中でもとくにイランとの親交が深く、経済面でも近年輸出入が増加傾向にあっただけに、制裁による原油価格の上昇や、代替供給先の切り替えに伴うコスト増など、日本企業への影響は大きい。原油輸入に関しては、日本は適用除外措置を求めてアメリカに対して政府間交渉を進めている。

茂木氏は「イランへの経済制裁によって中東問題はさらに混迷を極めることになり、米国の責任は大きい。緊張が高まってイランが世界の石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を閉鎖することになれば、世界経済にとってさらに大きな問題に発展する可能性もある」と指摘した。また「今後もトランプ政権の極端な政策によって、これまで地政学的問題に縁遠かった日本企業が影響を受ける事態になりかねず、十分注意が必要」とした。
(了)
リスク対策.com:峰田 慎二
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方