2022/05/18
いま目の前にある富士山噴火という危機
水に浮くシェルターで津波・洪水・火山から命を守る
建築・不動産の小野田産業(静岡県静岡市、小野田良作社長)は地震や津波、洪水、噴火などの自然災害から命を守る防災シェルターを開発、普及に向けて取り組んでいる。素材に発泡スチロールを使ったドーム形状で、軽い・浮力が高いといった特色から津波避難用の引き合いが多い。が、噴火用途についても実験を重ね、今夏には噴石に対する要求基準をクリアする考えだ。同社小野田良作社長に開発の経緯と思いを聞いた。
小野田産業
静岡県
発泡スチロール製で水に浮く
「SAM」は、150ミリ厚の難燃性発泡スチロールに高強度のポリウレア樹脂を3~4ミリ厚でコーティングしたドーム形状の防災シェルター。8人収容の基本タイプは外寸2.24メートル四方、高さ2.25メートルの空間ながら、高い耐衝撃性・耐候性によって災害直後の過酷な環境から命を守る。強い浮力があることから、津波避難用での引き合いが多い。これまでに約20基を販売した。
「先日納入した徳島県の方は、身体に障がいのある方。『もし津波が来たら死んでも仕方ないとあきらめていた。でも、これ(SAM)でやっと、自分は助かってもいいんだと思えます』といって喜んでくれました。その方は普段もシェルター内で仕事をしています」。開発・製造・販売を行う小野田産業の小野田良作社長はそう話す。
出入り口のドアとその対面に2カ所の窓、6ミリ厚のポリカーボネートを通して外の様子と自分の位置を確認できる。空気環境は壁に8カ所設けた通気孔で維持し、万が一水が侵入してきたら床の水抜き穴から排出。天井には円形の緊急脱出口を設けた。
ポータブルバッテリーとLED照明、簡易トイレを装備しておけば、必要最小限の生活が可能。ただし内部の設えは自在で、家具や家電を入れれば子ども部屋や趣味の部屋など、さまざまな用途に使える。「身近な場所に置いて日常使いをしながら、いざというとき30 秒で駆け込める。津波は、短いところは5分で到達します。躊躇したら間に合わない」
いま目の前にある富士山噴火という危機の他の記事
- 最後に駆け込める場所をまちの至るところに
- 企業が富士山噴火に備えなければならない理由
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方