1日あたりの使用量を把握

災害時に病院が医療施設としての機能を維持し続ける上で、欠かすことができないのが水。入院患者や職 員の飲料水に加え、負傷者への医療救護活動、さらには水洗トイレの洗浄水など大量の水が必要になる。阪 神淡路大震災では公共上水道施設の被害により、約7割の病院において上水道の供給が不能になり、長いと ころでは2カ月間も断水した病院があったと報告されている。

東京都福祉保健局が平成12年にまとめた「病院 の施設・設備自己点検チェックリスト」によると、 医療機関は日頃から、受水槽、高置水槽、配管バ ルブなど、水の供給に必要な施設・設備の点検を しておくとともに、平時に使う1日あたりの水の 使用量や災害時の節約可能量などについても確認 しておくことが重要としている。

東京都水道局の震災対策事業計画(平成20∼22 年度)では、地震被害の未然防止に向け、浄水場 や給水所など給水拠点施設の耐震化や、災害拠点 病院などへの供給ルートとなる水道施設について は、優先して耐震化を図っている。

仮に被災した場合の対応としては、震災応急対 策計画で「三次救急医療機関および災害拠点病院 への水道水供給にかかわる管路の被害については 発災後3日間以内の復旧を目指す」と定めている。 また、医療施設の所在地区の関係行政機関から、 災害対策本部を通じて緊急要請があれば、都水道 局が車両による応急給水活動を実施するとしてい る。

一方、災害拠点病院などの医療機関では、上水 道管が被災した場合の対応として、別の管路にホ ースをつなぎ、受水槽に水を供給するなどの訓練 を繰り返し行っている。

問 題は、災害拠点病院以外の中小の医療施設だ。 災害拠点病院などへのルートに比べ、公共上水道 施設の耐震化は遅れていると考えられるし、応急 復旧業務も遅れる可能性がある。給水車について も都水道局では2トン車4台、5トン車1台しか 所有していないため、自衛隊や周辺都市からの応 援が到着するまでは、調達が困難な状況が続くことが想定される。

都が平成18年にまとめた首都直下地震による被 害想定ではマグニチュード7.3の東京湾北部地震が 起きた場合、都内の断水率は34.8%に達する。おお むね1週間程度での復旧すると算出されているが、「病院の施設・整備事故点検チェックリスト」の中から、水の対策について、いくつかのポイントを紹介す る。

2010年1月号vol.17より