2020/05/14
パンデミックと心のレジリエンス
■レジリエンスはすでに証明されている力
レジリエンスという力は、けっして理論や仮説、流行語のようなものではありません。心理学者が長年にわたって多くの逆境に強い人々-戦争や災害のトラウマ、大病を乗り越えた人々などを調査した末に特定された力なのです。つまりレジリエントな人々が実在していること自体、この力が実際にあることを何よりも雄弁に語っているわけです。
レジリエンスという言葉は、心理学だけでなく、さまざまな現象や事象にも当てはめることができます。例えば京都の上津屋橋で有名な木製の「流れ橋」。大雨で増水したとき、ふつうの構造の橋では水圧やガレキで橋全体が破壊される危険がありますが、この橋はわざと橋げたを流出させて抵抗を減らします。あとで橋げたを掛け替えれば早く復旧できるのです。
私たちの体内に宿る「免疫力」や「ホメオスタシス(恒常性)」も、レジリエンスを備えていると言えます。免疫細胞は自己と他者(異物や細菌など)を区別して、必要なら他者を攻撃します。ホメオスタシスは寒さや暑さ、病気などで体調が崩れそうになると、体温や血液の成分を一定の安全な状態に保とうとする働きがあります。
防災やBCPの分野でも、しばしば「レジリエンス」という用語が使われています。「災害からの回復力」という意味ですが、国の施策などに見られる「強靭化」という言葉も、レジリエンスと同義ととらえてよいでしょう。
このように、レジリエンスという柔軟かつ適応性のある力のありようは多種多様です。次回はレジリエンスを高める3つの要素について考えてみます。
パンデミックと心のレジリエンスの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方