2016/10/19
防災・危機管理ニュース
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「潜在医療従事者」に対する新たな職域創出を目指すPINK CROSS PROJECT実行委員会(所在地:東京都中央区)は、防災の正しい知見を備えた看護師を「防災ナース」と称し、彼らを育成する事業を11月1日に始動する。発災時の生活再建のための知識をまとめた「PINK CROSS防災手帳」の同時発刊と提携団体との取り組みにより、活動の普及を目指す。
PINK CROSS PROJECTは、一般社団法人ナイチンゲールスピリット連盟(所在地:東京都中央区)によって今年7月に設立。フローレンス・ナイチンゲールが「看護覚え書き」の中に記載した看護師の原点「看護は特別なことではなく生活の中にある」に立ち戻り、潜在看護師の新たな職域創出など市民の健康増進啓発活動を行う。生活・防災・地域という3つのポイントを重要視し、子育てで培われたコミュニケーション能力など眠っている看護師の可能性を、市民の生活の質の向上に役立てることを目的としている。
WHO(世界保健機関)は、「健康」について身体的、精神的、そして社会的に安寧な状態であると定義していて、これを災害大国日本での災害時の支援体制に照らすと、発災直後72時間以内の身体の健康、心の健康を担保するための医療的支援体制は整備されているといえる。しかし72時間以降、復旧段階における社会的な健康、生活再建のための支援は充実しているとはいえない。災害による生活基盤の損害は、身体・精神面の医療的な支援だけでは復旧できないという現状がある。
日本には医療関連の国家資格を持ちながら離職状態にある「潜在医療従事者」が多く、看護師だけでも全国におよそ70万人いるといわれている。まずは70万人の潜在看護師を主な対象に、発掘のための告知イベントなどを開催し、集まった人材に対してセミナーなどの教育活動を実施、現行の災害復興支援の際に不足している領域の知識を提供していく。生活再建に必要な情報を迅速かつ的確に被災者につなげていく人材を「防災ナース」と称し、その育成を目指す。
「PINK CROSS防災手帳」は、防災ナース育成事業の教育部分を担う、発災時に役立つ具体的な知識をまとめた小冊子。従来の防災知識では抜け落ちてしまいがちな「社会的健康」にも焦点をあて、医療的支援だけではカバーできない部分の情報についても掲載する。「防災ナース」だけでなく、生活者全般も対象に広く配布する予定。発刊後は協賛団体との取り組みや地域との協働を積極的に行い、活動規模を広げていく。
また災害時に重要である精神的健康について、現代日本社会では犬や猫に代表されるペットは人間にとって大きな精神的安定の役割を果たしている。共に暮らす人にとってペットは「家族」そのもの。そのため災害時においてもペットといかに一緒に避難できるかは災害後の生活再建にとって重要な要素でもある。災害時における環境省のガイドラインでも「ペットの同行避難」が推奨されている。
そのような被災者の精神的健康の維持に鑑み、一般社団法人日本動物看護職協会(所在地:東京都北区)と連携して、全国に2万人規模とされるペットの専門家である動物看護師が防災知識を習得し、災害の際にペットとの同行避難時のリーダーとして活躍できる体制を整える。防災の観点からも、動物看護師が平時から地域のペット飼育状況を把握できるよう推進していく予定だ。
(了)
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