環境や労働安全などすべての関連法規の順守は、企業にとって容易ではない。EHSの視点から企業に求められるコンプライアンスは、どのような点に配慮が必要なのか。8月3日に本誌が主催したEHSセミナーで、ビューローベリタスジャパン株式会社執行役員戦略事業部部長の水城学氏が講演した。

 

ビューローベリタスジャパン株式会社 システム認証事業本部  執行役員戦略事業部部長 水城学氏

ビューロベリタスはフランス・パリに本社を置く試験、検査、認証を行う機関で品質や健康・安全、環境保護および社会的責任分野の適合性評価を行っています。

現在、グローバル企業は、安全で品質の高い商品だけでは勝負できなくなっています。企業は商品に加え、環境や労働安全、そして人権のコンプライアンスまで達成しなくてはならない時代になりました。また、ビジネスの法的責任があるかないかにかかわらず、経営支配権が及ぶ範囲まで管理が徹底されているか問われる時代でもあります。関連会社や子会社、あるいは資本関係はなくても自分たちの製品を作ってもらっているサプライヤーから「コンプライアンスの確認をどう実施していますか」という質問が届いていませんか?

数えきれない法規制

グローバル化で世界中に拠点を持つと、今回のテーマである環境や労働安全の法規制に絞っても進出国の数だけ法規制があります。実際の法律は1カ国で1つではありませんので、実際はその何倍もあります。多種多様な文化を背景に制定されるそれぞれの法律を、本社などの中枢ですべてコントロールするのは大変で非常にやっかいな問題です。

我々のパートナーであるENHESAという法令を調査しているコンサルティングファンドのデータを見ると、世界中で新規に制定される法令の数が年々増加しているとわかります。昨年だけで78の新しい法規制が発行されています。5年間で数百の法令が新たに発行されています。

こういった状況を踏まえると、コンプライアンスに関して今までのように「行政から言われたらやればいい」「自分たちはしっかりとやっているから、何か言われたら申し開きできるようにしておけばいいや」という感覚では企業として立ちゆかなくなります。グローバル企業として「正しいことをやっているだけではなく、正しいことを正しくやっている」と説明責任を果たす方向にコミュニケーションのあり方が変わってきています。そして、求められているのは、正当で透明な企業であれということです。そのためには自分たちで監査するわけにはいかないので、第三者の意見やお客様の意見を随所に入れ、正当性を高めていくことが求められています。