【北京時事】中国で社会問題となっている大学生の就職難が、一段と深刻化している。景気低迷が続く中、今年の大学・大学院などの卒業者数は1222万人と過去最高を更新する見込みで、政府に抜本的対策を求める声が上がっている。
 「ずっと仕事が見つからない」。2月下旬、北京市内で開かれた企業の合同採用説明会に参加した男性(24)は、ため息をついた。昨夏、山西省の大学を卒業し地元で仕事を探したが見つからず、北京に来た。「企業に電話したり履歴書を送ったりしているが、面接までたどり着けない」という。
 今夏に卒業を控え就職活動をしている北京市内の大学4年の男子学生(24)も「国有企業や大企業に入りたいが、募集が少なく狭き門だ」とこぼす。専攻の企業財務に関連する仕事を希望しているものの、「経験者優先の企業ばかりだ」と嘆く。
 中国国家統計局によると、今年1月の若年層都市部失業率(16~24歳)は16.1%で、全体(5.2%)と比べ際立って高い。長引く景気低迷で、企業が新卒採用を絞り込んでいることが背景にある。
 もう一つの大きな要因は、学生と企業の間のミスマッチだ。2000年に12.5%だった大学や専門学校など高等教育への進学率は、23年には60.2%に達した。かつての「一人っ子政策」や経済発展に伴う教育熱の高まりが背景にある。学生自身の希望に加え、高学歴で「立身出世」を願う親の期待もあり、若者が仕事に求める条件は高くなっている。
 中国人民大学中国就業研究所の24年10~12月期の報告書によると、学生に人気上位の業種はコンサルタントやIT関係などだが、そうした業種が主に募集しているのは現場の販売員や作業員が多い。合同説明会に参加した大手保険会社の採用担当者も「営業職は不足しているが、オフィスでの事務職を希望する学生ばかりだ」と話す。
 政府は、学生の起業を後押しするなど対策に躍起だ。今年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、人工知能(AI)関連など新産業を育成し、雇用の受け皿にする方針も示した。ただ有識者からは、ミスマッチ解消に向け「企業の需要に合わせ大学の募集人数や設置学部を見直す必要がある」(江蘇省産業技術研究院の劉慶院長)と教育改革を求める意見も出ている。 
〔写真説明〕合同採用説明会で学生らと面談する企業の採用担当者=2月21日、北京

(ニュース提供元:時事通信社)