【ワシントン時事】第2次トランプ米政権が発足して20日で1カ月。国内では「政府効率化」の名の下、公務員追放や一部連邦機関の縮小を断行している。昨年の大統領選勝利で「民意」を得たとして正当化を図るが、性急な対応による混乱も発生。対外的には、関税を武器に権益最大化を目指す「米国第一」の外交に乗り出した。
 「私は政府をより強く、より小さくするために選ばれた」。トランプ大統領は18日の記者会見で強調した。官僚機構が「ディープステート(闇の政府)」として国家を不当に運営してきたと主張し、縮減にまい進する。
 USAトゥデー紙によると、第2次政権発足後、約1万人の連邦職員が解雇され、約7万5000人が早期退職プログラムに応募した。政権は職員約230万人のうち最大10%の削減を目指しており、入省年次の若いおよそ20万人が当面の解雇対象となる。
 だが、強引な縮小に伴う弊害も表面化している。対外援助を担う国際開発局(USAID)の機能はまひし、人道支援活動が停滞。核兵器などの管理に当たる国家核安全保障局(NNSA)の職員を誤って解雇し、慌てて復職させた事例もあった。
 司法とのあつれきも生じている。政権は支出削減のため連邦補助金の一斉凍結を目指したが、裁判所に差し止められた。トランプ氏は15日、SNSに「国を救う者は、いかなる法も犯さない」と投稿。フランス皇帝ナポレオンの言葉を引用したとされ、法を超越した権力行使への野心を隠そうとしない。
 立法を介さず大統領令を駆使する国政運営に対し、議会多数派を握る与党共和党は沈黙している。党内でトランプ氏への批判は聞かれず、ロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官ら物議を醸した閣僚人事も、上院で順次承認された。
 ピュー・リサーチ・センターが14日に公表した世論調査結果では、より大きな権限をトランプ氏に与えることについて、65%が「非常に危険」と回答。三権分立の弱体化に、国民の間でも懸念が広がっている。
 外交では対中国を見据え、日本やインドの首脳を早々にホワイトハウスへ招き、関係強化に取り組んだ。一方、侵攻を受けるウクライナの頭越しに停戦協議入りすることでロシアと合意。同盟国であっても鉄鋼やアルミニウム、自動車に関税を課す構えも示し、米欧の分断を招いている。 
〔写真説明〕18日、米南部フロリダ州パームビーチで記者会見するトランプ大統領(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)