災害時に困るトイレの話
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第5回 災害時、携帯トイレは役立つのか?
大きな災害が起きると、水洗トイレの多くは使用できなくなります。それは地震でも水害でも一緒。今回お伝えしたいことの結論を先にいうと「トイレの初動対応として、携帯トイレは役立つ」ということです。なぜ今回このことを書きたいと思ったのかというと、先日ある地域でトイレの備えについて講演をした際、その場にいた方から「実は私、東日本大震災のとき、宮城県にいまして、携帯トイレがものすごく役に立ったのですよ」と教えていただいたからです。
2020/01/17
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第4回 避難所におけるトイレの備えの実態
これまで書いてきたとおり、水洗トイレは災害に強くないシステムです。地震で給水設備が壊れてしまえば断水し、停電だとしてもポンプが動かなければ給水されません。また、水を確保できたとしても、排水系統に支障があれば流すことはできません。浸水時は、地中の排水管も満水なので、汚水を流すことはできなくなります。つまり、どのような自然災害においても、災害用トイレの備えが必要ということです。これは、家族を守る、従業員を守る、地域住民を守る上で欠かせません。しかし、水や食料に比べて、トイレの備えは圧倒的に不足しています。そこで、今回は、避難所でのトイレの備えの現状について考えてみます。
2019/11/15
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第3回 浸水時のトイレ対応
気象庁は、令和元年8月28日05時53分「記録的な大雨に関する九州北部地方(山口県を含む)気象情報 第8号」として、佐賀県南部、佐賀県北部、福岡県筑後地方、長崎県北部、五島に大雨特別警報を発表しました。 昨年は、「平成30年7月豪雨」が西日本地域に甚大な被害をもたらしましたが、次から次に起こる災害によって、過去の災害の記憶が上書きされていくことを恐ろしく感じています。ですが、恐れているだけではいけません。現場から学び備えに変えていくことが必要です。 そこで、今回は浸水時のトイレ対応について説明します。
2019/09/02
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第2回 トイレ問題は命にかかわります
前回の記事では、「水洗トイレはシステムであること」「トイレは、備えや支援から抜け落ちること」「排泄は待ったなしであること」を書きました。 簡単にまとめると、大きな地震や水害のときは水洗トイレが使えなくなります。ですが、発災後6時間以内に約7割の人がトイレに行きます。トイレの備えがなければ、トイレが大小便で一杯になり劣悪な衛生状態となります、という話でした。 もちろん劣悪なトイレは超不快なので、それだけでも問題なのですが、そこが問題の本質ではないのです。先に結論を言うと、トイレ問題は命にかかわります。トイレ問題が引き起こす2つの深刻な事態とは「一人一人の健康被害」と「集団での感染症」です。いずれも関連死につながる重大な課題として認識すべきです
2019/08/02
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第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?
皆さん、水洗トイレの仕組みを考えたことがありますか? 私たちの暮らしの根幹を支えているライフラインの1つが「水洗トイレ」です。日々、目にするのは便器部分のみなので、水洗トイレとは便器である、なんて思ってしまいますよね。しかも、ボタンを押すだけで大小便を目の前から流し去ってくれるので、まるで魔法の器です。 ですが、そんな魔法は存在しません。当然ですよね。 水洗トイレの機能を確保するためには、洗浄水を確保するための給水設備、大小便を運ぶための排水設備、そして適切に処理するための下水道施設や浄化槽が必要です。また、これらの設備や施設を稼働するための電力設備も必要です。 つまり、水洗トイレはシステムとして理解する必要があります。もっと言うと、水洗トイレは大小便を水を用いて運び、適切に処理するシステムなのです。
2019/07/22