総務課長ヨシオのBCP策定メモ
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最終回:BCPに終わりはないのだ!
今日はヨシオにとって少し緊張気味の日です。この3日間、BCP策定会議で決まったことをひたすら文書としてまとめる作業に没頭していましたが、今日は最終ドラフトを社長と会議メンバーに披露する日だからです。これでOKが出ればBCPはバージョン1.0となります。今回は工場のBCPを完成させた副工場長も同席します。多少のライバル意識もありますが、今BCPが完成して手元にあるのは副工場からのアドバイスがあってこそ。感謝しなければなりません。
2017/10/19
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第11回:すぐに復旧できない時がBCPの出番なのだ
■重要業務の実行が意味するもの 月日が経つのは早いものです。若干の不安を抱えつつ、半分ナーバス、半分ハッタリで臨んだBCP策定会議もいよいよ大詰めです。今回は「事業継続のための活動」について議論するのです。 事業継続のための活動とはすなわち「重要業務」を実行すること。ヨシオは重要業務の意義と目的を、慎重に言葉を選んで説明しました。
2017/10/05
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第10回:燦然と玉虫色に輝く「重要業務」なのだった
■「重要業務」とは何のことだ?ヨシオは、BCP策定を命じられた直後に読んだいくつかの資料の中に「重要業務」という、分かったような分からないような用語があることがずっと気になっていました。「BCPでは重要業務を選定しなければならない」と書いてある。ところがその意味が資料によって異なるのです。
2017/09/21
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第9回:災対本部の活動の推進力はどこから来る?
■災対本部の活動指針が見えない、決められない ヨシオは、これまでのBCP策定会議が曲がりなりにもスムースに進んだことに安堵していましたが、一方で少し心の隅に引っかかることもありました。それは、災害対策本部の運営のことです。 最初の会議では、BCPに名を連ねたメンバーがどんなタイミングでどこに集合し、災対本部を立ち上げるのかまでを決めました。ここまではよかったのですが問題はその後。災対本部ではどんな活動をするのか。テーブルの前に座って指示を待つだけなら一膳メシ屋で注文を待つお客と変わらない。
2017/09/07
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第8回:水たまりを避けるように地震を避ける?
■地震リスクのジレンマに悩むヨシオ ヨシオは第4回目のBCP会議を前に、どうしたものかと思案していました。手元には地震のハザードマップと熊本地震に関する新聞記事のスクラップがあります。ハザードマップには地域別の震度分布が色分けされており、ヨシオの会社などは震度5強と6強の境目付近に位置していてなんとなく微妙です。
2017/08/24
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第7回:本社が火事? 120パーセントあり得ないね!
■火災対応はBCPのイロハのイ BCP策定会議の第1回目と2回目で議論してきた避難計画や安否確認、帰宅困難者対応といったものは、特定の災害に対してというよりは、何が起ころうともその必要があれば実行に移すという性格のものでした。しかし、その一方で災害の種類が異なれば、その予防の仕方や対処方法がまるで異なることも確かです。台風には台風に合わせた対処の仕方、火災には火災、地震には地震なりの対応方法があるわけです。
2017/08/10
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第6回:帰るに帰れない状況を想像してみよう
■従業員が先か、それとも一般市民が先か? 次の議題は「帰宅困難者」の問題です。「さて、皆さん…」と呼びかけたところで、ヨシオの脳裏になんとなく歯車がかみ合っていないような感覚がよぎりました。それもそのはず、帰宅困難者対応の問題は1つだけではないからです。 ヨシオの会社には、社会貢献としてA市と結んだ帰宅困難者支援ステーションに関する協定があります。大地震などの影響で交通網が寸断したとき、路上にたくさんの帰宅困難者が発生する。そうした人々に一晩でも安全なスペースを提供するため、S社1階のショールームのフロアを帰宅困難者支援ステーションとして開放することにしているのです。
2017/07/27
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第5回:BCPのチョー基本要件 ~避難と安否確認の手順
今日はBCP策定会議の第2回目の日です。BCP策定会議のために案出した"自分の会社にとって本当に必要と思えるテーマ"を検討するのです。ヨシオが最初に取り上げたのは避難の手順とルール、すなわち「避難計画」です。なんだ、BCPなのに避難計画かなどと言うなかれ。あなたの会社ではどこまでこの基本中の基本が全社員に周知されているでしょうか。日頃の社内の危機意識のレベルを思うにつけ、ヨシオもそんな疑問を実感しないわけにはいきません。
2017/07/14
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第4回:烏合の衆で危機を乗り越えられますか?
個々の社員の力を一つにまとめるために ヨシオの機転で、ひとまず会議メンバーの危機意識を無理やり引き出すことに成功したわけですが、次に待っているのは、実際に危機が起こったときにどう彼らの意識を一つにまとめればよいのかという問題です。しかし、これはさほどむずかしいことではありません。一度は気が進まなくなって読むのを止めていたBCPの参考書を見直してみると、そこにとっておきのことが書いてあるではありませんか。そう、「災害対策本部」もしくは「緊急対策本部」と呼ばれる組織編成のことです。
2017/06/15
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第3回:出だしが肝心のキックオフのはずだった…
「ムリに原則論通りのBCPに従うのではなく、自社にとって本当に必要と思えるところから手をつける。いわば皮膚感覚のBCPというわけか。なるほどね」。ヨシオも納得です。副工場長に電話を掛け、お礼方々いくつか細かな点を確認し合いました。
2017/06/01
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第2回:今更ながら、BCPを作らせていただきます!
数日後、ヨシオは総務の引継ぎファイルの中から背表紙にBCPと書かれた1冊を取り出し、しばらく読みふけっていました。BCPの策定リーダーを命じられたからには、まず前回のBCPがなぜ完成に至らずにうやむやになってしまったのか、その原因と経緯を知っておかなければなりません。でないと、また同じ失敗をするかもしれないからです。
2017/05/18
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第1回:"災害に強い会社"をアピールしてはみたものの…
このストーリーは、電装品メーカーS社の総務課長ヨシオが、あるきっかけでBCP(事業継続計画)の策定リーダーに命じられ、試行錯誤しながらBCPを完成させるまでを描いたフィクションです。会社にとって本当に役立つBCPとは何か、生きたBCPとは何かを理解するヒントになれば幸いです。
2017/04/27