BCPが対応するリスクの範囲は経営に不確実をもたらすリスクのすべて(イメージ:写真AC)

BCPの計画と現実とのギャップを、多くの企業に共通の「あるある」として紹介、食い違いの原因と対処を考える本連載。現在は第2章「BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コスト」のなかに潜む「あるある」を論じています。今回も前回に引き続き、事業継続戦略とは何かについて、筆者の考えを語ります。

第2章
BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コストの「あるある」

(5)BCPの実効性

②事業継続戦略
・事業継続は経営マター

不確実な日常の中でBCPはどうあるべきか

BCPが対応するリスクの範囲は「不確実をもたらすリスク」であり、まず地震、台風、積雪、豪雨などの自然災害や、これらにともなう二次災害、感染症の流行があげられます。

これらのリスク事象は、自組織で発生をコントロールすることはできないものの、リスク対策によって影響を低減することは可能です。そしてもし影響を受けた場合は、リソースの制約の度合いの組み合わせによって事業継続戦略を選択する「マルチハザードBCP」で対応していくことになります。

BCPはどこまでのリスクに対応が可能なのか(イメージ:写真AC)

次に、施設事故や車両事故、不祥事、オペレーションエラー、サービス品質の低下、外部からのセキュリティ攻撃、情報システムの停止などの組織内部の事象です。これらの事象は、日常業務にリスク対策を組み込んで予防することで発生をコントロールすることが可能。「個別の事象に対するマニュアル」によって影響の低減と発生後の対応を行うことが多いと思われますが、リソースへの影響によっては「マルチハザードBCP」で対応することもあるでしょう。

最後に、発生のコントロールが不可能で影響の範囲を予見しにくい事象です。具体的には気候変動、資源の枯渇、為替などの金融情勢、人権問題、生物多様性、バッタの大群などですが、このような事象に対して「BCPは無力である」と断じてはいけません。

●不確実をもたらすリスク事象とBCP

リスク事象による直接・間接の影響を素早く見極め、リソース制約に対して事業のイノベーションに取り組むこと、既存のBCPで対応すること、新たな成長戦略(成長戦略もBCPであり大胆な代替戦略といえる)に舵を切ること、あるいはそれらを同時に行うことは、事業部門ではできません。経営が経営の役割として行っていくものであり、これが経営レベルのBCPといえるのではないでしょうか。

●リスク事象の影響を見極め経営の舵を切る