気候とビジネスのリスク・シナリオ-第一部:私たちは今、どこにいるのか?
■世界のEVの普及率は?
電気自動車(EV)は、脱炭素社会に向かうための最も象徴的な切り札の一つだ。けれども、高速道路上の車が渋滞し、遠く霞んで見えなくなるくらいに延々と数珠つなぎになっている光景を目の当たりにしたりすると、膨大な数の車がEVに置き換わるまでに一体どれほどの時間を費やすことになるのだろうかと嘆息せざるを得ない。
国際エネルギー機関(IEA)は昨年10月、EVへのシフトが進むことで、世界の石油使用量が2030年までに日量約1億200万バレルでピークを迎えると予測。今後の数年で道路を走る電気自動車の数が、現在の約10倍になるとの見通しを示した。こうした予測と私たちの生活実感とは、かなりの隔たりがあるようにも思える。実際のところはどうなのだろう。2022年の世界のEV普及率は次のとおりだ(EV充電エネチェンジより)。
EV普及率が上位を占める国々は欧州に集中している。ノルウェー(88%)、アイスランド(70%)、スウェーデン(54%)、デンマーク(39%)、フィンランド(38%)で、販売された車の5台に1台以上がEVだ。欧州以外の国では中国が29%、次いでニュージーランド・イスラエルが13%で、日本は3%にとどまっている。
このように、世界的に見れば飛ぶ鳥を落とす勢いでEVは普及しつつあるのだが、日本ではなぜEVの普及が進まないのだろうか。そこには、総論ではCO2を減らすべくEVの普及には賛成という人も、自分事となると二の足を踏む人が少なくないという現実が垣間見える。次にその具体的な理由を、利用者目線で見ていこう。
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