政府は29日、国外からの武力攻撃を想定した避難シェルターの整備方針となる「基本的考え方」を公表した。沖縄県・先島諸島の5市町村を対象に、2週間程度の滞在が可能な「特定臨時避難施設」を新設すると明記。今後、台湾有事を念頭に各自治体と設置に向けた調整を加速させる。
 2022年末に改定した国家安全保障戦略は、「武力攻撃より十分に先立つ住民避難」を可能にするため、「さまざまな種類の避難施設の確保」に取り組む方針を打ち出した。政府はこれを踏まえ、沖縄県内の各自治体からシェルター設置の要望を聴取していた。
 特定施設は、市町村が国の財政措置を受けて公共・公用施設の「可能な限り深い地中」に設置。平時は会議室や駐車場などとして利用することを想定している。
 整備要件は(1)離島に所在するなど「避難の困難性」がある(2)全住民の避難を想定した計画を作成、公表し、国と都道府県による国民保護訓練を実施している―ことで、石垣市、宮古島市、竹富町、与那国町、多良間村が該当。原則は島外への避難だが、誘導に従事する行政機関の職員や、速やかな行動が困難な高齢、障害者らを収容する。
 政府は併せて、特定施設の仕様を定めた「技術ガイドライン」も策定した。弾道ミサイルや航空攻撃など4類型の武力攻撃を想定し、壁や床の厚さは原則30センチ以上の鉄筋コンクリート造りと規定。飲食料備蓄やライフライン整備、1人当たり2平方メートル程度のスペース確保も求めた。
 シェルターの類型には、コンクリート建物や地下鉄駅など一時的な避難先に活用する「緊急一時避難施設」もあり、既に全国の約5万6000施設(23年4月1日時点)が指定されている。 

(ニュース提供元:時事通信社)