西山美久・東京大先端科学技術研究センター特任助教(ロシア内政)の話 ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、政権は大統領選の圧勝によって、プーチン氏のこれまでの判断が正しかったと印象付けようとした。選挙後は従来の路線に従って内政・外交が進められ、侵攻の正当化や、反体制派の逮捕・拘束といった締め付けが続くだろう。
 ロシアでは「アメとムチによる統治」が行われている。国民にある程度不自由ない生活を保障する代わり、「言論の自由」などの欠如を認めさせる「社会契約」があるとも指摘される。この統治手法は機能しており、旧ソ連構成国で政権が打倒された「カラー革命」のように、現在のロシアで国民の不満が爆発して大きなうねりとなる可能性は低い。今のところ、プーチン体制の崩壊は起きないだろう。
 外交では欧米の対ロ制裁が続く中、中国やインドなどとの協力が一層拡大することが予想される。旧ソ連構成国、特に中央アジア諸国やベラルーシ経由での迂回(うかい)取引も継続するとみられる。
 ウクライナ侵攻を巡り、総動員の兆しは見られない。プーチン氏は大統領選勝利で国民の信任を得た形になったが、戦況でよほど追い詰められない限り、直ちに総動員をかけることはなさそうだ。 
〔写真説明〕西山美久 東京大先端科学技術研究センター特任助教

(ニュース提供元:時事通信社)