2024/03/02
防災・危機管理ニュース
2024年春闘の労使交渉が大詰めを迎えた。消費拡大を柱とする経済の好循環の実現には中小企業への賃上げ波及が欠かせず、春闘の焦点の一つだ。台所事情が厳しい中小に賃上げを促すには製品・サービス価格に人件費を転嫁しやすくする環境の整備が求められている。
「今年も給料を上げないといけない」。産業用機器を手掛ける東京都内の経営者は賃上げ継続に踏み切る考えだ。昨年は10%引き上げ、物価高手当も支給。今年も同程度の賃上げを予定する。
人材確保のため従業員の待遇を改善する中小企業が増えている。日本商工会議所が調査したところ、今年春に賃上げを予定する中小企業の6割が人材のつなぎ留めなど「防衛的賃上げ」を迫られている。
こうした背景には、人手不足が原因の倒産が急増していることがある。帝国データバンクによると、23年は前年比約1.9倍の260件と過去最多で、大半は中小企業だ。建設や物流、医療の7割が正社員の人手不足を感じているという。
中小は危機感を強めるものの、「無い袖は振れない」のも事実。金属加工業の経営者は「賃上げは必要だと分かっているが簡単ではない」と苦しい胸の内を明かす。中小企業庁が昨年秋に実施した調査では、価格転嫁率は原材料費が45.4%だったのに対し、人件費は36.7%にとどまった。
中小企業経営者の背中を押すには、取引価格への人件費転嫁が円滑に進むかどうかがカギを握る。政府は指針を定め、発注側に定期的な協議の場を設けることや経営トップの関与を求め、価格転嫁促進を目指す。
中小製造業の労働組合を中心とする「ものづくり産業労働組合JAM」の安河内賢弘会長は1日の記者会見で、「これだけ中小が注目された春闘はない」とし、価格転嫁の進展に期待を示した。連合の芳野友子会長は「働きの価値に見合った適正な価格が大事。労働者であり消費者である私たちが価値を認め合うことが大切だ」と訴えている。
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/26
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方