2024/03/02
防災・危機管理ニュース
【ニューヨーク時事】米地銀シリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻してから今月で1年。インフレ抑制と成長両立を実現する景気の軟着陸期待が高まる中、地銀破綻をきっかけに拡大した預金流出に歯止めがかかり、金融システム不安は後退した。一方、市場ではオフィス需要低迷による融資焦げ付きリスクが意識され、一部地銀の株が売り込まれるなど、中小行への警戒感はいまだにくすぶっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げに伴う保有債券の含み損が懸念されたSVBは2023年3月、SNS上の取り付け騒ぎで預金が大量流出し、破綻に追い込まれた。信用不安の余波は収まらず地銀ファースト・リパブリック銀なども相次ぎ破綻。混乱は欧州にも波及し、スイス金融大手クレディ・スイスは競合UBSへの身売りの道を選んだ。
FRBによると、23年3月の中小地銀の預金残高は前月比3%減の5兆2000億ドル(約780兆円)に落ち込んだ。その後も高利回りの金融商品へ流入が続いたが、預金金利引き上げや、景気軟着陸期待による顧客の心理改善を受け、残高は回復基調をたどる。
ただ、地銀を巡る環境は厳しいままだ。地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)は今年1月末、商業用不動産融資焦げ付きに絡み、23年10〜12月期決算が赤字に転落したと発表。これを機に同社や商業用不動産融資を多く扱う他行の株価が低迷した。さらにNYCBは2月末、減損処理で赤字が当初の10倍超に膨らむと公表し、またしても同社の株価が急落した。
コロナ禍で在宅勤務が浸透し、全米のオフィス空室率は年内に2割ほどに迫る勢い。物件所有者による返済が滞り融資の不良債権化が後を絶たなければ、「一部金融機関の経営を揺るがす」(米国野村証券の雨宮愛知シニアエコノミスト)懸念が強まりそうだ。
〔写真説明〕米シリコンバレー銀行(SVB)のオフィス=2023年3月、アリゾナ州(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
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