世の中を一気に変革させるNFTに乗り遅れるな
Web3.0時代への対応 その②
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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Web3.0(ウェブスリー)というキーワードを頻繁に目にするようになってきました。ブロックチェーンを基盤とした分散型のインターネットとして新たに提唱された考え方ですが、なぜ多くの企業が注目しているのでしょうか? 前回は、web3.0の中核概念として欠かすことができないNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)について解説し、NFTとは「デジタル上のデータに対して唯一無二(代替できない)のデータであることの証明とそれを所有する価値を与え、かつ、その価値の所有者が誰かを永久的に追跡することを可能にしたシステム」だと書きました。今回は、まずNFTについてもう少し詳しくみていきます。
■事例:NFTは世界で1つのものである証明
NFTは通称「代替不可トークン」や「唯一無二トークン」といわれることもあります。「トークン」とは、証票、しるし、証拠という意味で、不動産に例えれば「権利書」のようなものだと思ってもらえばいいと思います。NFTのポイントになるのは、デジタル上で「世界で1つのものである」ということを証明できることです。
通常、インターネット上の画像などのデジタルデータは(法的な問題を一旦脇に置けば)技術的には誰でも簡単にコピーできます。コピーされたデータとオリジナルのデータとの判別はつきません。よって、コピーはほぼ無限に可能となり、同じデータが溢れかえることになります。そして、それには何の価値もありません。対してNFTは、「唯一無二」の価値を持つことを証明できるデジタルデータです。前回記したブロックチェーン技術により、画像や映像、動画などのデジタルデータの所有者や取引の履歴を記録することで、唯一無二の証明が可能になりました。「誰も持ってない」ことが証明できるシステムによって、需要と供給の関係が生まれ、NFTの価値につながっていくようになったのです。一部にはかなりの高額で取引されるNFTがありますが、それは、そのデータに価値を感じる人が多いからという理由です。マーケットは全世界です。そのNFTについて興味がある人が自分の周りにたとえ1000人に1人しかいないとしても、世界中がマーケットであると思えば、市場規模は800万人になります。その800万人が唯一無二の価値を考えて値付けをするのですから、価値が高騰するのもうなずけると思います。
現在、NFTで取引が活発な分野は、アート、ゲーム、音楽やライブ、コレクターズアイテム、デジタル上の土地などが主なものになりますが、今後はそれ以外でも、会員権や医療情報、NFTを担保にした融資(ローン)など、実用化に向けた動きは多岐にわたると言われています。
NFTが企業活動に今後どのように関係してくるかということについて、以下のポイントが挙げられるかもしれません。
① 「所有」の証明と、その改ざん防止
これらについては既に説明不要ですが、その副産物として、所有するNFTの資産価値を高める、または、保持するという役割も生まれてくるでしょう。
② 売買の容易さ
NFTは、その売買において暗号資産との交換が必要になります。したがって、NFTの取引には暗号資産の口座を開設しなければなりません。しかし、口座開設し、仮想通貨のウォレット(財布)が持てればすぐにNFTが取引されているマーケットプレイス内で売買が可能になります。今後のNFT市場の拡大が容易に予測できると思います。
③ 転売利益
NFTは、自分の持っているものをマーケット内で誰にでも転売可能です。場合によっては利益が得られるのと同時に、その利益の一部をNFTの作者に還元する仕組みを取り入れることができます。作者にとっては新たな収益還元の方法となり得るため、NFT制作(発行)のインセンティブになります。
④ 新たなコミュニティの発生
NFTは共通の価値観を持った人が集まりやすく、仲間意識も醸成されて盛り上がっていくケースがあります。すると、盛り上がりを見てさらに人が集まりだし、どんどんコミュニティが拡大していきます。人気が出ると自然とNFTの価値が上がり、所有者がキャピタルゲインを得られるメリットが生まれます。また、NFTの所有者だけが参加できるイベントなどを設計に取り入れれば、よりつながりの強いコミュニティが作れる可能性もあります。
■対策のポイント:Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略を読み解く
ここまでNFTについて見てきましたが、では今後の日本において、さまざまな分野でNFTが実用化され、それに乗り遅れると企業活動が厳しい状況に追い込まれるのかといえば、国内ではNFTの利用・促進にあたりクリアにしなければならない問題が数多くあるようです。
自民党の国会議員と有識者による「Web3.0プロジェクトチーム(PT)」が、今年3月に政府に提出した「NFTホワイトペーパー(案)~Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略~」によれば、
●暗号資産やNFTに対する現行の規制や税制が足かせとなり、日本のWeb3.0関連ビジネスは世界から取り残され始めている
●金融規制や会計制度が投資を阻み、トークン発行規制が将来ある企業の経営の機動性を奪い、イノベーションを挫く社会の風潮や重い税負担が有望な起業家やエンジニアの海外移住を招いている
などといった問題点が列挙され、それを解決するための提言が示されました。
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