線状降水帯で特に危ないケースと影響が少ないケース

線状降水帯によって河川の洪水や土砂災害などが発生する危険性がある場所は、ライン状になっている雨雲の通り道に当たる場合や、同じところにかかり続けているように見える場合です。逆に影響が少ないケースはライン状の雨雲の位置が時間の経過とともに大きく動いていく場合です。少し詳しく見ていきます。

1)ライン状の雨雲の通り道に位置しているケース

イメージで把握するため、下の図をご覧ください。赤色で示した部分は、活発な雨雲がライン状に連なった部分を表しています。赤色部分の中にある矢印は、帯状に連なった個別の雨雲や雨雲全体が進む方向を示します。

この場合、雨雲が向かう方向はA地点にちょうど向かっていく形です(図の上部)。時間が経過する様子をグラデーションで表現していますが(図の下部)、ライン状の雨雲の連なりが進む方向の下にA地点があるため、大雨が非常に長い間続く恐れが見て取れます。一方、B地点は今のところ、線状降水帯のラインから離れているのでA地点に比べて雨量が少なくなる可能性があります。

写真を拡大 図2. 線状降水帯(赤色)の通り道にあるA地点が大雨となる場合のイメージ(筆者作成)

2)同じところにライン状の雨雲がかかり続けるケース

線状降水帯の中には見かけ上、一つのところでほとんど動かないように見えるものもあります。図1で取り上げた広島の事例が、まさにこのケースに該当します。再度図1を確認いただくと、1時間経っても2時間経っても同じような場所で同じような降雨が続いていることが見て取れます。下のイメージ図で言えば最も危険なのは、ライン状の雨雲の直下に当たるC地点です。

写真を拡大 図3. 線状降水帯(赤色)がかかり続けるC地点が大雨となる場合のイメージ(筆者作成)

3)ライン状の雨雲が足早に移動するケース

同じライン状の雨雲でも、下の図のように雨が降る場所が足早に動く場合があります。こうした形の線状降水帯では、C地点やE地点で一時的にザーッとした降水となっても短時間のうちに雨が上がるため、停滞するタイプの線状降水帯ほどの被害は一般的には発生しません。

写真を拡大 図4. 線状降水帯(赤色)が矢印の方向に足早に通り抜けていく場合のイメージ(筆者作成)

ここまで三つのパターンを見てきましたが、「一つの場所から見て、継続的に雨雲がかかり続ける形がとにかく危険だ」と覚えておいてください(1と2が該当)。