2017/07/14
防災・危機管理ニュース

東京都は13日、「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた検討委員会」の第3回会合を開催した。災害時に物資輸送など使われる特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化の促進に向け、建築物の用途別に課題を洗い出し、対策を進めていく方向性が示された。
都では2016年度、対象建築物約2500棟の訪問を行い、約1070棟を訪問済み。訪問済みの内訳は分譲マンション21%、賃貸マンション17%、賃貸事務所・店舗が20%だった。課題は全用途共通、分譲マンション、賃貸マンション、賃貸事務所・店舗、個人住宅・その他の5種類で分類し研究する。
分譲マンションではヒアリングで「耐震改修に要する費用負担が大きい」が83%、「区分所有者等との合意形成が困難」が56%など、費用や区分所有者や入居者といった関係者の合意形成に加え、耐震改修でブレースを設置しなければならない住戸では機能が低下するなど、さらに合意形成を困難にする課題も指摘された。
賃貸マンションでは「賃借人等との合意形成が困難」「一度転居した場合は空室になる可能性が心配」「賃借人から賃料下落要請の可能性がある」「移転費用等の負担が大きい」といった回答がなされた。賃貸事務所・店舗でも賃借人との合意形成や移転費用の負担が指摘されている。
出席した委員からは分譲マンションについて「耐震改修だけでなく建て替えや売却も選択肢。容積率の緩和ができれば、それらもしやすくなる」「戸数が少なかったり築古だったりで、管理組合のないマンションもあるのでは」といった意見も出た。都の2011年の調査では、6.5%のマンションで管理組合の存在が確認できなかったという。
都では沿道建築物の耐震化改修で区市町村によっては90%の補助が出ることも説明。今年度は約2250棟の耐震化への取り組みに未着手の建築物に個別訪問を行う。加藤孝明委員長(東京大学生産技術研究所准教授)は「(改修費用が高いなど)対象者の思い込みで止まってしまうのはよくない。情報を出していくべき」と指摘。「ハードルを乗り越えて改修に至ったケースもある。訪問の際には単なるヒアリングでなく、そういった成功モデルも話すといいのでは」と述べた。
■関連記事「緊急輸送道路沿道耐震化へ2250棟訪問」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/3257
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方