新型コロナウイルス対策の課題
強制力のある施策を打ち出せない日本組織の弱み
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2020/02/22
WITHコロナのBCP
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
新型コロナウイルスの感染拡大に対し、国や自治体、あるいは組織でもさまざまな対策を打ち出し、その対策一つ一つに疑問や不安の声があがっている。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応については、クルーズ船に乗員乗客を14日間以上船内待機させたことや、ウイルス検査の結果が陰性の方を下船後そのまま帰宅させたことについて国内外から批判や対策の甘さが指摘された。
大規模イベントの開催については、主催者判断に委ねるとのあいまいな政府の発表により、同じ地域内でもイベントを開催したり、しなかったり対応が異なり、主催者や参加者からは戸惑いの声も聞こえる。
今が感染拡大の初期段階であることには大方の共通理解が得られているのだろうが、個人の自由や経済活動が規制されるため慎重な意見も強く、政府も強制力を持った施策(例えば後に説明する新型インフルエンザ等特別措置法)を打ち出せずにいるのだろう(もちろん東京2020大会への影響が大きな理由ではあるだろうが)。
各企業レベルでも、マスク着用を促したり、イベント参加の自粛、在宅勤務の推奨などの措置を講じる動きが増えているが、義務付けてまで徹底している企業は多くはない。
危機管理の専門メディアであるリスク対策.comが企業を対象に実施したアンケートによると、「マスクの着用や咳エチケットの呼びかけ」は90%を超える企業で実施されているが、このうち徹底して実施しているとの回答は41.8%。イベント参加の自粛や禁止については、何らかの基準を設けて実施しているのが31.9%で、そのうち徹底して実施しているのは13.5%だった(集計中につき、詳細は近く発表)。しかし、これらの「徹底」も、強制力があるものなのか、努力義務なのか、あいまいさは否めない。今流行りの「在宅勤務」(実施しているは19.5%で徹底しているは5.5%)についても、推奨がほとんどで義務付けという規則を設けている企業は少ないはずだ。おそらく、自宅で仕事をしても労働時間としてカウントするので、会社に来る必要がない、というのが大半な企業のいうところの「在宅勤務」だろう。しかし、会社で仮に感染者が発生した際に「会社に来るな」と強制力を持った在宅勤務が命ぜられるだろうか? そもそも最も在宅勤務すべきなのは、感染した際に重篤化するリスクが高い高齢者や持病を持っている人であるはずなのに、そうした人がブルーカラー的な仕事を任せられているがゆえに、在宅では仕事ができず、結果的に感染リスクが高い状態に晒されたままになっているというおかしな現象も起きている。
WITHコロナのBCP の他の記事
おすすめ記事
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方