写真:ロイター/アフロ

新型コロナウイルスの感染拡大に対し、国や自治体、あるいは組織でもさまざまな対策を打ち出し、その対策一つ一つに疑問や不安の声があがっている。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応については、クルーズ船に乗員乗客を14日間以上船内待機させたことや、ウイルス検査の結果が陰性の方を下船後そのまま帰宅させたことについて国内外から批判や対策の甘さが指摘された。

大規模イベントの開催については、主催者判断に委ねるとのあいまいな政府の発表により、同じ地域内でもイベントを開催したり、しなかったり対応が異なり、主催者や参加者からは戸惑いの声も聞こえる。

今が感染拡大の初期段階であることには大方の共通理解が得られているのだろうが、個人の自由や経済活動が規制されるため慎重な意見も強く、政府も強制力を持った施策(例えば後に説明する新型インフルエンザ等特別措置法)を打ち出せずにいるのだろう(もちろん東京2020大会への影響が大きな理由ではあるだろうが)。

各企業レベルでも、マスク着用を促したり、イベント参加の自粛、在宅勤務の推奨などの措置を講じる動きが増えているが、義務付けてまで徹底している企業は多くはない。

危機管理の専門メディアであるリスク対策.comが企業を対象に実施したアンケートによると、「マスクの着用や咳エチケットの呼びかけ」は90%を超える企業で実施されているが、このうち徹底して実施しているとの回答は41.8%。イベント参加の自粛や禁止については、何らかの基準を設けて実施しているのが31.9%で、そのうち徹底して実施しているのは13.5%だった(集計中につき、詳細は近く発表)。しかし、これらの「徹底」も、強制力があるものなのか、努力義務なのか、あいまいさは否めない。今流行りの「在宅勤務」(実施しているは19.5%で徹底しているは5.5%)についても、推奨がほとんどで義務付けという規則を設けている企業は少ないはずだ。おそらく、自宅で仕事をしても労働時間としてカウントするので、会社に来る必要がない、というのが大半な企業のいうところの「在宅勤務」だろう。しかし、会社で仮に感染者が発生した際に「会社に来るな」と強制力を持った在宅勤務が命ぜられるだろうか? そもそも最も在宅勤務すべきなのは、感染した際に重篤化するリスクが高い高齢者や持病を持っている人であるはずなのに、そうした人がブルーカラー的な仕事を任せられているがゆえに、在宅では仕事ができず、結果的に感染リスクが高い状態に晒されたままになっているというおかしな現象も起きている。