連載で描くのは6年後、2030年の「最悪シナリオ」(Adobe Stock)

■最悪のシナリオは絵に描いた餅か?

今回から始まる第二部では、私たちの社会や経済が既存の枠組みから抜け出すことができず、結果的にこれまで通りのペースで大気中の温室効果ガスが増え続けて2030年を迎えた時、どのような世界になっているかを描く。いわば「最悪のシナリオ」である。2030年の気候に基づくリスクアセスメント、もしくは被害想定といってもよい。

世の中には、ネガティブな予測は当たらないという見方もある。過去の予測を検証すると、そのほとんど全てが間違っているという。楽観論よりも悲観論が注目を浴びやすく、たとえ良いニュースの方が多くても目立たない、というのがその理由だ。

結果から判断すれば楽観論の方がより現実に近いということでもある。こうした意見を持つ人々の多くは、もっぱら「テクノロジーと優れたリーダーたちがすべてを解決してくれる」という信念に裏打ちされている。しかし、これは本当だろうか?

考えてみれば2030年なんてあとわずか6年後だ。今に比べ、目に見えて事態が悪化すると見なす方が、むしろ非現実的かもしれない。とはいえ、温室効果ガスがどんなに増え続けようとも、盤石な世界文明、世界経済がそう簡単に影響を受けるはずはないと、みなさんは言い切れるだろうか。

すでにエビデンスとして第一部で見てきたように、驚くべき速さで聞き捨てならない災害や影響が世界中でひんぱつしている。これらを「温暖化とは何の関係もない。たまたま起こった異変に過ぎない」「しばらくすれば事態は落ち着く」と一蹴するだけの理由を見つけることの方が、むしろ難しいのではないか。