令和6年度防災基本計画の見直しでは、福祉支援の充実・強化が盛り込まれた(イメージ:写真AC)

防災基本計画の改定と福祉支援の項目

政府の中央防災会議(会長・岸田文雄首相)は6月28日、国や自治体の災害対応の基本となる防災基本計画を改定した。この日の会議で岸田首相は、次のように述べた。

「今回の防災基本計画の修正では、能登半島地震の経験を踏まえ、孤立集落の発生等を見据えた物資輸送手段としてのドローンの確保や、海路・空路を想定した救助用装備資機材の整備、応援職員の活動拠点のリスト化、避難所における段ボールベッド等の早期設置や、トイレカーの活用、福祉支援の充実・強化など早期に取り組むことが可能な項目を盛り込んでいます」
(出典:首相官邸HP 総理の一日「中央防災会議」)(下線部は筆者による)

防災基本計画の福祉支援に関する改定項目

福祉支援に関して、具体的にどの項目が改定になったかを見ていきたい。下線部が新規部分である。

第1編 総則
第2章 防災の基本理念及び施策の概要 (略)

(2) 迅速かつ円滑な災害応急対策
・指定避難所等で生活する被災者の健康状態の把握等のために必要な活動や福祉的な支援を行うとともに、仮設トイレの設置等被災地域の保健衛生活動、防疫活動を行う。また、迅速な遺体対策を行う。


第3章 防災をめぐる社会構造の変化と対応
(中略)一方、人口減少が進む中山間地域や漁村等では、著しい高齢化の進行、集落の衰退、行政職員の不足、地域経済力の低下等がみられ、これらへの対応として、福祉的な支援の充実、災害時の情報伝達手段の確保、防災ボランティア活動への支援、地場産業の活性化、コミュニティの活力維持等の対策が必要である。
福祉的な支援の充実が明確に位置付けられた(イメージ:写真AC)

避難所における福祉的な支援が明確に位置づけられた。すでにDWAT(災害派遣福祉チーム)が、長期避難者の生活機能の低下や要介護度の重度化など二次被害を防止するため、一般避難所で高齢者や障がい者、子ども等の要配慮者に対する福祉支援を行う民間の福祉専門職として活動している。私自身は、関連死が在宅で生じることから、在宅支援にも活動の範囲を広めていただきたいと考えている。

また、能登半島地震の被災地など中山間地域、漁村は確かに著しい高齢化の進行で厳しい状況にあるが、全国的にも75歳以上の高齢者がこの30年間で約3倍になるなど著しい高齢化が進行していることを忘れてはならない。障がい者も難病患者も増えている。それに対して、災害時の支援体制が不十分のままとなっている。したがって、災害時における福祉支援の充実は全国的に重要な課題である。