情報共有システムを活用 
災害時の被害状況をインターネットで随時確認できる「災害支援マップシステム」も開発した。大規模災害時に約4000拠点に及ぶ全国にある生協の店舗や宅配センター、物流施設などをウェブ上の地図に示し、災害時の被害状況をインターネットで随時確認できる。被災生協だけではなく、物資の調達にかかわるプライベートブランド商品を製造する取引先工場約1400カ所の状況もここに表示され、道路情報なども加えて表示できるようにした。支援物資となる商品の取引先とは協定を結んで物資を確保し、発災後すぐに対応してもらえるよう商品部とのホットラインとなるMCA無線を配備した。 

これらと並行して、日本生協連では全国各地で災害対策連絡会を開き、「全国生協BCP」の説明やMCA無線の訓練を行っている。また、東北や関東、東海など全国の各エリアで中心的な役割を果たす大規模な生協と協力し、小規模な生協も経営状態に関わらずBCPを構築できるように呼びかけ、支援している。それでも各生協は独立して運営しているので、「(日生協が全国の生協にBCPのアナウンスをしても)どうしても経費はかかるので全国一律にはいかない。小さい生協にとって簡単ではない。取り組みには当然違いが出てくる」と武田氏は語る。来年度には東海地震、そして今後は東南海地震マニュアルの作成を予定している。広域でのBCP連携を目指し、効果的な大規模災害対策を東から西へ徐々に進める戦略だ。

新たな首都直下マニュアル 
今年2月には首都直下地震対応マニュアルを作り上げ、再び「全国生協BCP」の改訂を行った。生協は店舗販売のほかに、共同購入や個人の購入で宅配の利用者が非常に多い。「首都圏など人口が多いところでは宅配に特化した生協もあり、生協間でも競合状態になっています。しかし、災害が起きた時には、主要店舗を絞り込み、50約店に優先して物資を届けることに決めました」(武田氏)。 

日本生協連では昨年にも首都直下地震を想定した訓練を行っている。主に生協内連携の確認を目的に、日本生協連とプライベート商品の物流を担う関連会社シーエックスカーゴと首都圏の事業連合が参加した。東京・渋谷にある日本生協連が被災し、埼玉県桶川市にある物流センターに対策本部を移すシナリオだった。今年は、参加組織を増やし、各生協グループが持つBCPの確認と、生協同士の連携にフォーカスして訓練を行った。 

「発災直後は、各生協が作ったBCPで対応します。今回は、ある程度被害状況が分かってきた段階からの演習で、各生協グループが与えられたシナリオや被害状況を把握し、自らのニーズを満たすため、どのように生協間で情報をやりとりし、共有し動くことができるのかを確かめることが狙いでした」(坂田氏)。 

シナリオは、2月25日午後15時にマグニチュード7.3の地震が都心南部で発生。交通網が各地で寸断され東京都の主要幹線道路である環状七号線は通行止め、電車は軒並み停止するというもの。各生協グループは支援物資の受け入れ態勢の準備を店舗で行いつつ、道路状況や交通情報を進んで取得し、伝達して共有しないと物資は届かない。さらに、自治体からの支援要請にも答えなくてはならない。 

全国にある生協を合わせると2014年1月の段階で563自治体と災害支援協定を結んでいる。今回の訓練では東京都生協連に行政からの要請も入った想定として、自らも被災した中で、他の生協と協力した対応が求められた。現在は洗い出された課題を整理している段階だという。武田氏は「被災地にとって生協の事業を続けることが最大の支援。被災地、非被災地が協力して対応していきたい」と話している。