帰署後におけるPTSIの初期予防についての具体例

①帰署後の後片付け時の活動記憶の整理と次の現場への気持ちの入れ替え

②シャワーを浴びることでのリフレッシュ

③出動報告書記載時の具体的活動内容記録による明確な体験把握

④キッチントークでの感情交換、相互ストレス緩和、メンタルリセット

⑤就寝前の読書や軽い運動などでの心身調律

⑥寝る前にはネガティブなことや反省などを思い浮かべず、たとえ、要救助者が死に至ったとしても、十分にやるべきことはやったという達成感にウェイトを置くこと。

⑦自分が心身共に健康であれば、これからも多くの人たちを助け続けることができるという自信と責任を持つこと。

また、悲惨な現場を対応した勤務明けに、お互いに過度な精神的苦痛を緩和するために朝から酔っ払うまで酒を飲んだり、パチンコなどのギャンブルを長時間行ったり、自己流でPTSIのさまざまな症状から逃げようとしますが、場合によっては消防士を自殺にまで追い込むことがあります。

2、EMSC(エモーショナル・メンタル・ストレスコントロール)とは

出典:You Tube

たとえば、自分の子どもと同じ年齢の子どもが、顔の形がなくなるほどの悲惨な交通事故に遭った現場で、救出するまでにその子を左腕に抱いている数分間、自分の子どもと「同一視」してしまい、大量の血液や頭皮臭、母親の助けを求めて泣き叫ぶ声など、現場の全てが映像として記憶されてしまうことがあります。

私も福岡市消防局でレスキュー隊だった時代に出動した数百件の現場シーンが、30年経った今でも映像として記憶が残っており、帰省時、それぞれの現場の前をタクシーなどで通過する際に悲惨な情景が蘇えり、そのたびに亡くなった方々へ手を合わせています。

特に自分の左腕の中で息を引き取った方々の最後の言葉や血まみれでも安らかな顔、 握りしめられた手のぬくもりや息を引き取るときの焦点が合わなくなる目など、約30年前の体験ですが、今でも、野次馬の声やサイレンの音など、周りの音までもハッキリと思い出せるほど深く脳に記録されています。

自己判断ですが、災害現場の記憶が原因となる PTSIのような心身の症状は出ておらず、鬱病なども無いと思われますので、問題は無いと感じていますが、当時、現場対応した隊員個々の感受性も異なるため、中にはトラウマティックになったケースもあるのかもしれません。

アメリカの各消防局でも過去25年間、消防士の鬱病や自殺などにより消防力を低下させないために災害後のデブリーフィングや退職者をピアという相談役カウンセラーにするなど、「メンタルマネージメント」について、挑戦してきました。

しかし、なかなか消防士自らが手を挙げてカウンセリングを受けることはなく、今でも組織的なプログラム下のトレーニングによってメンタルを鍛えるのは難しい課題となっています。

次のビデオは具体的なEMSC(エモーショナル・メンタル・ストレスコントロール)が紹介されています。

■Firefighter Survival "Beyond The Call"

出典:YouTube/ London Professional Fire Fighters Association

■Illinois Fire Fighter Peer Support

出典:YouTube/ Illinois Fire Fighter Peer Support