図‐1:2024年4月8日北米横断皆既日食の日食中心帯の経路と食分 AmapoftheApril8,2024totaleclipsepathandpercentobscurationacrosstheUS44
(Source:https://www.greatamericaneclipse.com/april-8-2024/TotalSolarEclipse2024US—GreatAmericanEclipse)

1. はじめに

2024年4月8日(UT:世界時)に、北米を横断する皆既日食があったことは、ご存じであろうか?

「神秘的な真珠色の太陽のコロナ」の姿を見せ、多くの人が「畏敬の念」を感じて太陽を眺めた。しかし、人々の感動の裏で、アメリカ国内の電力インフラにおいては、日食に起因する太陽光の日射が無くなることで、太陽光発電での電力量「原発およそ30基分」、「30ギガワット〔GW〕」余りが失われるという想定がでていたのだ。中でも、最も影響が大きいのは、皆既日食の中心食帯が通過する、テキサス州の送電網で、「17ギガワット」の太陽光エネルギーが失われるという試算が、コンサルティング会社シュナイダー・キャピタル・グループから出されていた。

図‐1(頁上)に示すよう、日食の中心食帯の経路以外においても、アメリカ全土が、大きく欠けた部分日食域になり、太陽光の日射が大きく減ったのである。

2. 文明進化型の災害

日食による、太陽光発電の発電量急減/低下問題は「文明進化型の災害」で、昨今の世界的な再生可能エネルギーの普及に伴い、今回だけではなく、下記に掲げる様、欧米等で、大きなハザードとリスクになっている。

近年の、欧米における日食による、太陽光発電の発電量急減/低下問題を、下記に挙げる。

・2015年3月20日:大西洋・北極海皆既日食
(ヨーロッパ全域が、大きく欠けた部分日食域に)
・2017年8月22日:北米横断皆既日食
(西海岸から東海岸まで、皆既日食の中心帯が横断)
・2023年10月22日:北アメリカ・中央アメリカ・南アメリカ縦断金環日食
(アメリカ北西岸からメキシコ湾、中米、ブラジル北部まで、皆既日食の中心帯が横断)
・2024年4月8日:北米横断皆既日食
(メキシコからアメリカ合衆国の中東部、カナダ東部まで、皆既日食の中心帯が横断)

図‐2:2017年北米横断皆既日食(左上→右下)と2024年北米横断皆既日食(左下→右上)の経路図
(Source:NASA'SSCIENTIFICVISUALIZATIONSTUDIO)

そもそも太陽光発電は、基本的には、日射エネルギーを利用するため、「昼間の電力需要ピークを緩和する為の発電方式」であり、日射エネルギーの無い夜間は使用できない電源である。「日中であっても、気候・天候や季節・時間、地形等に依存し、不随意に変化」する、人間が出力制御することのできない電源なのである。

太陽光発電を導入する際、デメリット面でのハザードとリスクを回避するため、「その出力変動対策として、出力調整可能な電源を常に必要とする」という、技術的に最重要な項目が存在する。「日食起因の太陽光発電の発電量急減/低下問題」は、再生可能エネルギーの検討では、最重要で考慮すべき項目であるはずだ。

太陽、地球、月の運行は、天体力学にもとづいて精密に計算できるため、未来のいつ、どこで、どのように日食が起こるのか、予測可能で、特定の地域に固定すれば、「数十年に一度程度、決まった日時に必ず発生する天文現象」である。

「100年に一度」「1000年に一度」等という、発生予測ができない、台風、地震、津波、火山噴火等の自然災害とは異なり「予測可能」なのだ。今回の、北米横断の皆既日食では、テキサス州など、2017年に続き、わずか7年で、同じ場所を通過するケースもある。