■方針・手順・経営資源…見直し要件はどのBCPも同じ

次に「Plan」で割りだした6つの見直し項目について内外の関係者を集め、議論しながら内容を精査しました。これが「Do」のステップです。次の内容について見直しと確認を行いました。

まず「パンデミック発生時の対応手順」。感染拡大期における感染者および感染疑い者発生時の処置方法などを、オブザーバである産業医のアドバイスのもとで確認しました。

次に「事業活動の対応方針」。消毒液とマスクの必要数量の備蓄。不要不急業務のリスト。製品・サービス提供の縮小・中止の基準。出張旅行中止の基準を確認しました。

三番目は「従業員への教育」。これはパンデミック発生に備えた段階的な行動方針や衛生管理などが中心です。手洗い・消毒の徹底や接触を避ける工夫、重要業務に対応できる複数の代替人員研修の必要性などについても見直しました。

四番目は「コミュニケーション」についてです。パンデミック時の変則的な業務対応等について内外に、滞りなく伝達する方法と手段を持たなければなりません。

五番目。「顧客や取引先への対応」です。パンデミック発生期間中は、当社の製品やサービスへのニーズが激増あるいは激減する顧客が想定されることが分かりました。これら外部への対応方針(優先順位・遅延・中止等)の取り決め内容を確認します。

最後は「ITの活用」です。テレビ会議やスカイプによる人的接触を避ける会議方法に、いつでもシフトできるかどうかが問われます。また、一般事務や営業関係の書類作成や見積もり作成・報告を自宅から行う、いわゆるテレワーキングの方法についても追加的に検討しました。

■業種によってはさらなる見直しが必要

Sさんの会社では、ひとまず最低限以上の6項目の見直しと確認を行い、BCPに必要な変更を加えて改訂版として配布することになりました。さて、次のステップである「Check」ではどのような評価を行えばよいのでしょうか。見直し作業やBCPの改訂・配布を終えたというだけでは、「Check」とみなすことはできません。かと言って実際にパンデミックが起こるのを待つというのもヘンです。

しかし、この6項目のひとつひとつをテーマにした訓練や演習を行えば、ある程度の効果の確かさや有効性は把握できるはずです。感染者発生時の救急対応については実地訓練方式で、事業継続問題としての変則的な業務態勢へのシフトなどについては、机上演習でカバー可能でしょう。

なお、パンデミック対応についての検討や確認事項は、ここで述べたことがすべてではありません。海外進出している企業の場合は、現地社員とその家族の対応方法、出国・帰国時の手順などを追加することもあるでしょう。また、パンデミックがピークを迎えた時には食料品等が劇的に品薄・品不足に陥る可能性がありますから、地震対応BCPと同じように非常時の食料品や水の備蓄が役立つことも考えられます。

また、Sさんの会社の例では業種を明示していませんが、これが小売業や製造業、運輸業といった具体的な会社のこととなると、さらなる見直し項目が必要なことは言うまでもありません。例えば、製造業の場合、原料料や部品などが品不足や欠品になる可能性があります。理由は原材料・部品の仕入先や運輸業者に多数の感染者が発生して調達不能に陥るためです。このような時の代替調達の方法についても、オーソドックスな地震対応のBCPがヒントになるかもしれません。

(了)