2021/07/01
気象予報の観点から見た防災のポイント
水俣土石流災害―7月の気象災害―
水俣豪雨の概観
図3に、1時間ごとの気象レーダー画像を示す。当時の気象レーダーのデータは現在より解像度が粗く、約2.5キロメートルメッシュになっていて、画像は細かなモザイク状に見える。

19日22時、五島列島の南に強いエコーが現れた。最も強い部分のエコー強度は、37~41ミリメートル/時(赤)である。23時には、エコー強度41~49ミリメートル/時(橙)のメッシュも見られるようになった。
20日0時、エコーの本体部分が長崎県にかかり、一部は熊本県にもかかり始めた。天草島の西方には、エコー強度49ミリメートル/時以上(紫)の最強ランクのメッシュも現れている。セルの移動距離から移動速度を測ると、東へ時速40キロメートル程度で進行中とみられる。この速度を維持すれば、エコーの最強部分は1.5時間ほどで天草島に、3時間ほどで水俣市に到達することになる。
20日1時、最強部分のエコーの形が変化し、東西走向に帯状に連なり始めた。帯の長さは130キロメートルほどになり、東側の先端部は天草島に達している。最近、このような形状の降水域を「線状降水帯」と呼んで警戒するようになった。真っすぐに細長く連なる形状が特徴で、集中豪雨時によく見られる降水帯である。名称に「線」の文字を含むが、決して線ではなく、幅をもっている。その意味では、これは決して良いネーミングとは言えない。
20日1時のレーダー画像では、上記の線状降水帯とは別に、水俣市付近でエコーが強まっていることに注目しなければならない。最も強い部分のエコー強度は、29~37ミリメートル/時(黄)である。水俣市の集中豪雨は、この頃に始まった。
その後、水俣市付近の強雨域は6時頃にかけて維持された。最盛期は4時頃で、エコー強度41~49ミリメートル/時(橙)に達している。1時の画像で見られた線状降水帯は、その後形が崩れた。水俣市付近の強雨域は、線状降水帯にはならなかったが、およそ5時間にわたってほぼ同じ場所で持続した。
気象予報の観点から見た防災のポイントの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方