企業のBCPを地域に生かす

Interview 内閣府政策統括官(防災担当)付
       普及啓発・連携担当参事官付総括補佐 西澤雅道氏

2013年の災害対策基本法改正により、地域コミュニティの防災活動を推進する「地区防災計画制度」が今年4月に施行された。住民や事業者が地区の防災計画を作り、それを市町村が策定する「地域防災計画」の中に規定することができる、住民自治により地域の防災力を強化する制度だ。背景には、東日本大震災において再認識された「共助」を生かし、地域コミュニティと自治体などとの連携を通して防災力を向上させるねらいがある。3月28日には指針として地区防災計画のガイドラインが発表された。今なぜコミュニティにクローズアップした「地区防災計画」が必要なのか。地区防災計画のガイドラインを取りまとめた内閣府防災担当普及啓発・連携担当参事官付総括補佐の西澤雅道氏に聞いた。

Q1.地区防災計画の概要について教えてください。
住民の方々が主体となり自主的に助け合って安全性を高める、ボトムアップ型の防災力の底上げが目的です。市町村の地域防災計画の中に地区防災計画を組み込むことで、コミュニティで決めた防災計画が反映されるようになりました。 

地区防災計画を定める方法は2通りあります。市町村防災会議の判断で、地域の意向を踏まえて市町村の地域防災計画に組み込む方法と、コミュニティの方々が地区防災計画案を作成し、市町村防災会議に提案して組み込む方法です。 

コミュニティの特色に合った地区防災計画をもとに、地区と市町村が互いに目を向け協力するので総合的な防災力アップにつながります。

Q2.地区防災計画が制度化された背景は?
東日本大震災は未曾有の大災害で、行政が壊滅的な被害を受け機能不全に陥りました。行政機能が部分的に麻痺したために、本来であれば市町村が素早く支援に動くべきところが手が回らず、地域コミュニティの方々が活躍されました。体の不自由な方に配慮しながら自発的に避難所の運営にあたるなど、細やかな対応をしていただきました。共助の重要性が再認識され、地域コミュニティの活動が防災において1つの鍵を握るとの理解が広がりました。それを受けて、地域コミュニティによる共助を支援し、推進できるように定められたのがこの制度です。

Q3.これまでの自主防災組織等の計画との違いはどこにあるのでしょうか?
地区防災計画は、コミュニティによる自発的な活動を後押しする制度です。市町村の地域防災計画に位置付けられるようになるということは、市町村にも地区防災計画の運用をしっかり把握していただくことになります。市町村は地区防災計画を定めた地区について、地区居住者等の参加の下、地域防災力を充実強化するための具体的な事業に関する計画を定めることが規定されました。 

これまでの地域の自主防災組織等の計画は、主に消防庁の「自主防災組織の手引」を利用してつくられています。ただ、残念なことに自主防災組織等の計画は策定されてから時間が経っている場合が多く、形骸化してきています。法律に基づく新しい制度ができたこの機会に見直し、よりよい地区防災計画にしていただきたいと考えています。 

コミュニティの「かたち」は問いません。これまでの消防団や町内会、商工会の集まりに限らずマンションの住民でも可能です。数万人単位という話も出始めています。参加人数の問題ではなく実際に活動し維持できる体制、環境にあるかどうかが重要なポイントです。

Q4.地区防災計画で食料の備蓄を決めた場合など、補助金などによる支援を期待できるのでしょうか?
現在のところ直接的な補助金などは予定していませんが、独自に備蓄の補助や防災リーダーの育成などを助成している自治体は少なくありません。今年度からモデル事業を進め、市町村と連動して先進的な事例を踏まえたノウハウの提供と、地区防災計画に基づいて行われる訓練を支援する予定です。

繰り返しになりますが、市町村は地区防災計画を定めた地区に対して具体的な事業計画を決めなくてはいけません。事業計画には当然予算が関わってくるので、備蓄や防災リーダーの育成の補助などが想定されています。できたばかりの法律で、具体的な点はまだ検討段階ですが、ひとつの目安になると思います。