2017/05/02
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~
【処置エリアの設定について】
前回の連載でも書いたように、災害救護活動は時間との戦いである。正しい教育と訓練を受けたCFR、CERTメンバーは、迅速に要救助者の処置エリアを設定しなければならない。処置エリアは当然だが、要救助者にとっても救助者に対しても安全な場所であることが条件である(UUUの法則:図2参照)。また、救急車や医療資材のアクセスに便利な場所であることも考慮に入れるべきだ。
■処置エリアのレイアウト(図3参照)
処置エリアは、要救助者の処置の緊急度に応じて綿密に区分されることが望ましい。前回シリーズの「市民レベルによる簡易トリアージについて」の中で説明した様に
は緊急の処置が必要な要救助者、
“D” Delayed
は早期の処置が必要な要救助者、
“M” Minor
は歩行可能な軽症の要救助者、
“DEAD”
は黒タグ傷病者、
というふうに表示して視覚化することが重要である。
可能であれば、“赤・黄・緑・黒”と色分けされた標識を用いてエリアを区分できれば理想的である。また“赤”と“黄”の場所は活動する者同士が声でコミュニケーションが取れる距離間を保ち、資機材を共用し、急な要救助者の様態の変化にも対応できるようにすることを考慮すべきだ。また“M”の要救助者は処置エリアを離れても良いし(離れた場合は必ず記録に残す)、CFRまたはCERTメンバーのサポートとしてアシストしてもらうことも可能だ。
各処置エリアに配置する要救助者同士の間隔は処置する者の活動スペースを考えて、約60㎝~90㎝の間隔を空けると良い。また黒タグの傷病者を安置する場所は処置エリアから見えない所で管理されるべきである。
→一刻も早い高度な医療処置を必要とする。
Delayed (D):黄色タグ~生命危機には至らない要救助者処置の優先順位は下がるが、早期の医療処置が必要。時間の経過によっては赤に変わるケースもあるので、継続的な評価を必要とする。
Minor (M):緑タグ~歩行可能な軽傷の要救助者。
→CFR、またはCERTメンバーのアシストも可、また処置エリアを離れる場合は必ず記録に残す。
Dead (DEAD):黒タグ~気道確保2回後、呼吸が確認できない要救助者。
→「黒タグ=何もしないと死亡することが予測されるが、最短の時間で最大数の傷病者を救わなければならないという原則(状況)の中で、赤タグ・黄タグより搬送の優先順位が低い、救命不能群に属する要救助者」(※または、明らかに死亡が確認できるご遺体)。
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方