2017/04/07
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
かつては「夢の素材」だったアスベスト
アスベストは、竹取物語の「火鼠の皮衣(ひねずみのころも)」、東方見聞録の「サラマンダー(火トカゲ)の皮」として珍重されていたり、平賀源内発明の「火浣布(かかんぷ)」であったり、古くから存在していたと言われています。
最盛期の1949年から2005年までのアスベスト総輸入量は、1000万トンでした。これだけの量ゆえに撤去されないままそのまま残っているのです。
ここまで普及したのは、高い耐火性や防音性がありつつも廉価な天然素材として、夢の素材だったからです。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の時のワールドトレードセンターの1棟が、危険性が最も高いけれども耐火性の高い青アスベストが多用された建造物でした。そのおかげで、倒壊がもう1棟と比べ17分遅く、避難を助けたとも言われています。
耐火性を生かして、学校の理科の実験でも石綿つきの金網が多用されていた時期がありました。2005年8月に文部科学省がセラミック付き金網に代替する通達を出すまで、使用されていた所もありますから、身近で使った記憶がある方も多いかもしれません。
それだけ身近だったアスベスト製品製造販売が全面禁止になったのは2012年3月です。

全面禁止は東日本大震災より後なのです。もうほとんどが撤去されているはずだというのは幻想で、現実と向き合わなければいけませんよね(涙)。
個人宅でありそうな場所は、こちらでチェックしてみてください。

学校、事務所、公共施設はこちらでチェックを。

体育館天井や防音のための天井として公共施設でもそのままの場合があります。

見落とされがちなのは、エレベーター内部やボイラー室や天井裏。

そして、煙突です。日常生活で飛散することは少ない場所ですが、解体や災害時、問題になります。学校の煙突については、文部科学省が2016年、公立・私立を問わずすべての学校に調査の依頼を延長までして実施しました。けれども調査の依頼が終了した段階ですので、まだすべての撤去が終わったわけではありません。

■学校施設等における石綿含有保温材等の使用状況調査(特定調査)について(依頼)(文部科学省通達)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1375077.htm
うちは耐震だからアスベストが残っていても大丈夫という思い込みも間違いです。熊本地震では新耐震基準の家でも倒壊していましたし、耐震基準は命を失う程度の倒壊を免れるための基準であって、部分的な損壊は、耐震であっても起こることが想定されています。
だからこそ、災害時のアスベスト放出に備え、かさばる防塵マスク持ち歩くべきなのか悩むというわけなのです。
ですが、仮にコンパクトに持ち歩けたりしても、揺れている最中にアスベストがすぐに舞い散ってくることを考えると、マスクをつける時間があるのか?という問題が残ります。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方