かつては「夢の素材」だったアスベスト

アスベストは、竹取物語の「火鼠の皮衣(ひねずみのころも)」、東方見聞録の「サラマンダー(火トカゲ)の皮」として珍重されていたり、平賀源内発明の「火浣布(かかんぷ)」であったり、古くから存在していたと言われています。

最盛期の1949年から2005年までのアスベスト総輸入量は、1000万トンでした。これだけの量ゆえに撤去されないままそのまま残っているのです。

ここまで普及したのは、高い耐火性や防音性がありつつも廉価な天然素材として、夢の素材だったからです。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の時のワールドトレードセンターの1棟が、危険性が最も高いけれども耐火性の高い青アスベストが多用された建造物でした。そのおかげで、倒壊がもう1棟と比べ17分遅く、避難を助けたとも言われています。

耐火性を生かして、学校の理科の実験でも石綿つきの金網が多用されていた時期がありました。2005年8月に文部科学省がセラミック付き金網に代替する通達を出すまで、使用されていた所もありますから、身近で使った記憶がある方も多いかもしれません。

それだけ身近だったアスベスト製品製造販売が全面禁止になったのは2012年3月です。

 

全面禁止は東日本大震災より後なのです。もうほとんどが撤去されているはずだというのは幻想で、現実と向き合わなければいけませんよね(涙)。

個人宅でありそうな場所は、こちらでチェックしてみてください。

写真を拡大 (出典:国土交通省「目で見るアスベスト建材」 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/01/010425_3/01.pdf )



学校、事務所、公共施設はこちらでチェックを。

写真を拡大 (出典:国土交通省「目で見るアスベスト建材」 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/01/010425_3/01.pdf )

体育館天井や防音のための天井として公共施設でもそのままの場合があります。

(出典:国土交通省「目で見るアスベスト建材」 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/01/010425_3/01.pdf )

見落とされがちなのは、エレベーター内部やボイラー室や天井裏。

アスベストが残っていたエレベーターシャフト内部 (写真提供:株式会社エコ・24)

そして、煙突です。日常生活で飛散することは少ない場所ですが、解体や災害時、問題になります。学校の煙突については、文部科学省が2016年、公立・私立を問わずすべての学校に調査の依頼を延長までして実施しました。けれども調査の依頼が終了した段階ですので、まだすべての撤去が終わったわけではありません。

アスベストが残っていた学校の煙突 (写真提供:株式会社エコ・24)

■学校施設等における石綿含有保温材等の使用状況調査(特定調査)について(依頼)(文部科学省通達)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1375077.htm

うちは耐震だからアスベストが残っていても大丈夫という思い込みも間違いです。熊本地震では新耐震基準の家でも倒壊していましたし、耐震基準は命を失う程度の倒壊を免れるための基準であって、部分的な損壊は、耐震であっても起こることが想定されています。

だからこそ、災害時のアスベスト放出に備え、かさばる防塵マスク持ち歩くべきなのか悩むというわけなのです。

ですが、仮にコンパクトに持ち歩けたりしても、揺れている最中にアスベストがすぐに舞い散ってくることを考えると、マスクをつける時間があるのか?という問題が残ります。