2019/09/20
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■ 日系企業の購買部長は最高のポジション
中国現地の日系企業にて「三社見積もり」を制度化した場合、どのような状況になると思われますか? 結論から先に申し上げると、すぐに単なる「通過儀礼」としての相見積もりとなって形骸化してしまいます。
日本人責任者は事情も言葉も分からないため、ローカルスタッフから上がってきた三社の見積もりを比較するだけしかできません。一応、三社から見積もりを取ったという事実は残るわけですから、後はそこからどれを選ぶのかだけの話です。
しかし、購買を担当したスタッフは、自らが置かれた立場をフルに活用し、自分が望む企業や商材が入るように熱心に取り組みます。それが中国では当然の役得だからです。日本人責任者が三社から見積もりを取れと言えば、どんな手法を取ってでも競争相手から上手に加工された見積もりを取ることなど朝飯前ですし、日本人責任者がちゃんと自分が望む企業を選択してくれるような見積もりや技術書を作成することなど簡単なことなのです。なぜなら、そうすることで関わる全ての人(日本人責任者以外の)がもうかるからなのです。
中国現地の日系企業において、この相見積もりによって間違った設備を導入したり無駄な保守費用を払ったりしている例は枚挙にいとまがありません。実はこれが製造コストの上昇につながっていることを見抜いている企業はどれくらいあるでしょうか? 心配でなりません。
「性悪説の中国だから少しくらいの賄賂は潤滑油」などとバカなことを言ってはいけません。性悪説の世界だからこそ、一粒の悪い種がちょっとの期間に膨大な損害として成長してしまうのです。性悪説の世界では、常に悪がまん延しないように抑止力を与えておかねばなりません。これが鉄則なのです。
ですので、中国では「相見積もり取得」が必要なのではなく、「抑止力を働かせた見積もり取得」が大事なのです。つまり、外部の業者、メーカー、サプライヤーなど、それぞれ「三社から見積もりを取る」のではなく、自社内の「複数のスタッフをお互いにけん制させながら見積もりを取る」ことが重要なのです。そして、最終責任者の日本人がそれを細かくチェックするということをしなければならないのです。これが日本人責任者の唯一の仕事と言っても過言ではないでしょう。そうすることでローカルスタッフに緊張感が生まれ、腐敗の温床がまん延することを防ぐことが可能になるのです。
(了)
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