山林火災における緊急避難について

1、どの活動現場においても活動前、災害現場本部が各隊活動エリアのセーフティーゾーンをあらかじめ見極めておき、すべての消防士に地図と共に伝え、急に火災旋風が襲ってきたり、風向きが変わって火災に囲まれそうになる前に逃げ込むルートを優先的に確保させる。

出典:Cal Fire

2、もし、逃げるルートがない場合は、チェーンソーなどを使って、セーフティーゾーンまでの避難ルートを作ってから、消火活動や防火帯の拡大作業などを行う。

出典:Cal Fire

3、避難するときにはすべての荷物をその場にすべて捨てて逃げること。装備を背負っていたり、手に持っていることで、逃げるスピードが30%ほど遅くなり、不利になってしまう。逃げるときには、装備よりも命を選ぶこと。ただし、逃げるのに道具が必要と思われるときには、最低限の道具を手分けして搬送し、逃げるスピードを優先すること。

出典:New Generation Fire Shelter

4、セーフティーゾーンは、煙や火災を一切心配しなくても良いエリアで、前後左右の視界も広く、ヘリからの視認性も高い場所である。また、草の背も低く、燃焼の危険も少ない。

出典:Cal Fire


5、活動場所を移動するたびに新しいセーフティーゾーンを全員で確認し、また、ヘリによる予備資機材の搬送集結所、負傷者のホイスト救助場所として活用することも考えておくこと。

出典:Cal Fire

6、火災に囲まれたときには、乾いたタオルやマスクなどを使って、自ら高温度の火炎ガスによる気道熱傷と熱風を呼吸した事による肺のやけどの予防に努めること。火災旋風に囲まれた際、濡れたタオルを使っての呼吸は高温の蒸気を吸うことになるため危険である。また、マスクやネックウォーマーは煤を呼吸しないためのフィルターの役目を果たすかも知れないが、火炎ガス等、高温空気の吸引を予防することはできない。なお、たった1回の火炎ガスを吸っただけで肺と気道が大やけどしてしまうため、命取りになることを忘れないこと。

出典:Hot Shield HS-2 Wildland Face Protector
http://www.forestry-suppliers.com/search.asp?cat=29

7、山林火災は気象状況などの風向きによって、また、飛び火によって、火点が移動したり、拡大するので、最初に設定したセーフティーゾーンがいつも安全な場所とは限らない。どこにいても、常に状況変化に対応できるよう、自己避難能力と仲間の誘導テクニックなどを発揮すること。

出典:Cal Fire

8、消火作業は常に集団活動が優先されるが、避難の際は集団で逃げる必要は無く、個人の判断で逃げることもできる。ただし、逃げ切った際には、必ず、麓の災害現場本部に戻り、避難状況報告を行い、チェックアウトすること。

9、セーフティーゾーンにたどり着かないと判断した際には、身近な岩の隙間や谷の亀裂の間など、できるだけ火災旋風から免れるための安全な場所を見極めて避難すること。また、樹木によっては油分を多く含み、火災を拡大させる種類があるため、それらの木を避けて身を守ること。

10、火災旋風の中では、木々の燃焼音や風の音で、仲間と無線や拡声器でコミュニケーションすることが難しいため、手信号でコミュニケーションを行い、手信号の受信者は必ず、発信者に返信すること。

11、緊急避難時はチェーンソーの燃料である混合ガソリンや緊急信号に使う発煙筒などを各自、できるだけ、まとめて捨てること。捨てる箇所が複数に広がると、その分だけ、火災の拡大も大きくなる。

12、夜間活動時の緊急避難はヘッドライトだけが頼りになるため、とても困難になる。特に下り斜面への滑落、走り根や切り株などに注意すること。

13、避難の最終手段であるファイアーシェルターを使用する際には、体力が続く限り逃げ切った後、そのエリアで風向きと延焼方向を読み、できるだけ、一番安全と思う場所を選ぶこと。
なお、ファイアーシェルターを着用する際、シェルター内に風を入れながらオーバーを着るように身を包むと早く&確実に自分を守ることができるが、普段から何度も練習をし、数秒以内に着用完了できるように準備しておくこと。