■重要な情報資産の保護対策

「情報資産」とは会社にとって必要不可欠なデータや重要書類のことを指す。日々会社の事業運営や営業活動を通じて作り出される、他には存在しないオリジナルなもの、一度失ったら二度と取り戻すことのできないものである。

典型的な重要データの例としては基幹サーバーに保存されている経営に関わる機密情報や財務記録(売掛・買掛)、給与データ、従業員名簿、顧客データなどがある。業種によっては製品の仕様書や設計図(CADデータなど)、研究開発に関するものも含まれる。重要書類には契約書や権利書その他があるだろう。

こうした情報資産は、火災や自然災害、コンピューターウイルス、ソーシャルエンジニアリング(人の手で破壊されたり盗まれたりすること)などが原因で失われるリスクがあるため、「バックアップ」は必須である。しかしせっかくバックアップやコピーをとっても、原本と同じ場所に保管するだけでは十分ではない。火災や自然災害では原本もバックアップも同時に被災する危険性があるからである。

これを避けるためにも「遠隔保管」は不可欠である。今や重要なデータ類はクラウドサービスなどを利用して遠隔保管するのが一般的である。紙の重要書類については、コピーをとって金庫や社長宅に保管するか、PDF化できるものはデータと同じ扱いで遠隔保管するとよいだろう。


■その他の点検箇所

見落としやすいものとして「床上の配線・コード類」に注意したい。机下や床上に複雑にはりめぐらせたコードや配線をうまく収納してすっきり整理したいものである。きちんと束ねられた配線は、万一配線が切断しても発見しやすく、避難する際に足をとられる危険性も低くなる。

また「給湯室・洗面所」も無視できない。給湯室や洗面所は、水道が長期間止まってしまうと、食事や生理的な側面で復旧活動や業務の継続に深刻な影響を与える。緊急時の備蓄として、洗浄を極力回避するための紙コップや紙の皿、簡易トイレセットを最低3日分程度は用意し、これを超える期間については、随時入手するといった方針を決めておこう。

近年は大地震が起こるたびに「エレベーター」の停止と閉じ込め等の事故が発生している。非常用呼び出しボタンを押しても救助にはかなり時間がかかると考える必要がある。長時間閉じ込められた場合の通知方法や安全な救出方法について、ビルの管理会社やエレベーターの保守サービス会社の立ち会いのもとで入念な説明を受けておくことが大切。

最後に「社員食堂」。自社ビルに併設した社員食堂などは、緊急時に食料や水の調達場所として潜在的に当てにされる場所ではある。けれども、厨房や冷蔵庫などの設備は水道・ガス・電気の依存度が高いので、被災してこれらが使えなくなった時にどこまで利用価値があるのかを現場の責任者と検討しておくことが大切である。

(つづく)